第6章-92 裁判長の退院
ーコウの病院/セキとガイの病室ー
コウがセキの頭の包帯を巻き直し、軽く手を当てた。
「かなり、綺麗になりましたね。
予定より少し早いですが、退院にしましょう。
気分はいかがですか?」
セキが軽く息をはく。
「やっとか……寝過ぎて体中がバキバキだ。」
「これに懲りたら体を労わる事です。
ですが、まだ経過観察はありますからね。
僕からも診察には行きますが、通院も忘れずに来てください。」
「分かっている。あまり何度も言うな。」
「忘れない方なら、何度も言わないんですけどね。」
コウとセキの後ろから、ガイが声をかけた。
「セキ様、退院おめでとうございます。」
ガイが頭を下げる。
セキは手を軽く上げて制した。
「ガイ、今は頭を下げるな。
どうせ通院に来るたび、また顔を合わせるのだからな。」
セキはコウを睨むように一瞥した。
コウは穏やかに微笑んでいる。
「ガイさんも、もう少ししたらリハビリを始めましょう。
やはり警備隊長は、治りが段違いですね。」
「恐れ入ります。」
ガイは背筋を伸ばし、セキに向き直った。
「セキ様、落石事故の監督の処刑……よろしくお願いいたします。」
「分かっている。
お前の部下の分も全て背負ってやる。
何を言われても許しはしない。」
「ありがとうございます。
部下達もきっと報われましょう。」
二人のやり取りを見ていたコウが、にこやかに笑った。
「確か公開処刑をされるんでしたよね。
僕の病棟を満室にした相手のお顔……とても興味があります。
フフッ、楽しみですね。
セキさん、見に行きますから、僕用の席を用意していただけませんか?」
コウの飄々とした言い回しに、セキは無表情、ガイは少し引いた視線を向けた。
ガイが話題を変える。
「セキ様、処刑にレイ様を参加させるのですか?」
「レイか……。」
セキは考えるように天井を見上げた。
その目はどこか憂いをおびていた。
「もちろん参加はさせる。
だが、処刑は私が行う。それは変わらん。」
セキは視線をガイへと移した。
「ガイ、お前も体が許す限り来い。
後ろで立っているだけでも、必要ならば椅子を用意しても構わん。
警備隊長としての責務を果たせ。」
ガイは目を見開いた。
「宜しいのですか?
警備隊長として参加しても……普通ならば、怪我をすれば除隊か移動ですが。」
「まだお前を除隊させた覚えはない。
それともなんだ?退職届でも用意しているのか?」
「滅相もございません!!
警備隊長として、処刑の立ち合いに同行させていただきます。」
ガイはセキに跪いた。
コウが静かに注意した。
「ガイさん、安静にしてください。
本当に腕が動かなくなりますよ。」
「……かしこまりました。」
ガイはゆっくりと体勢を戻した。
セキがふと笑う。
「ガイ、お前と同室になった時、他人と一緒という鬱陶しさを感じていたが、意外と悪くなかった。
お前は中々に見ていて飽きない。
戻ったあともよろしく頼む。」
「勿体無いお言葉……ありがとうございます。」
ガイは、セキの笑顔にぞわりとしながらも、丁寧にお礼を言った。




