第5章-88 光の線と鎧との再会
ー電子世界ー
眩しいほどの無数の光の線が走っている。
まどろみの中、ゼロユイは目を覚ました。
目の前にはプロトタイプと、青いフクロウがぼんやりと見えた。
「やあ、また会えたね。
だが……いつもと様子が違うようだ。」
ゼロユイは、ぼんやりとプロトタイプの言葉を聞いていた。
「人間の感情というのは実に多種多様だ。
君はそれに触れ今に至る。
だが、君は今1人の人間に執着され、君自身も流されそうになっている。」
ゼロユイの口がゆっくりと開いた。
「言ってる意味が……分からないよ。」
「つまり、君の旅をここで終わらせる事ができる。どうする?」
「終わらせられない。
医者に、ならなきゃいけないから……。」
プロトタイプが笑う。
「君の意思なら尊重しよう。
だが、もしも違うなら……フクはこちらで回収させてもらうよ。」
ゼロユイの目がパチリと開いた。
「フクだけはダメ!!」
目を覚ますと、寮の自室のベッドだった。
目の前にはフクが心配そうに見ている。
「あれ?なんで?」
フクを抱っこして、あたりを見渡すと、枕元に封筒が1通置いてあった。
封筒を開けると、手紙と自室の鍵が入っていた。
手紙を開いた。
⸻
ゼロユイさんへ
セキさんと合わせてから、具合が悪そうでしたので、学校まで送らせていただきました。
教員の皆様には話を通してありますので、今日はゆっくり休んでくださいね。
フクさんは始終ゼロユイさんを心配していました。
本当に賢い子ですね。
これからも、大切にしてあげてください。
僕は病院に戻ります。
最後まで一緒にいられなくて残念です。
またお会いしましょう。
コウより
⸻
手紙を閉じる。
「僕……コウさんに迷惑かけちゃったんだ。」
膝の上にいるフクは僕の裾を掴んで引っ張った。
「フクもごめんね。
びっくりさせちゃったよね。」
「ビー!ビッ!!ビビー!!」
フクは羽をバタつかせながら、今まで聞いた事のない鳴き声を出した。
「ビ……ビー?どうしたの?
大丈夫だよ。フク、大丈夫だから。」
フクを宥めていると、玄関からノックが聞こえて来た。
フクは身構えている。
「大丈夫だよ。行ってくるね。」
僕は寝室の扉を閉じ、玄関を開けた。
教員が立っていた。
少し緊張した顔をしている。
「ゼロユイ、体調は大丈夫か?
君にお客さんが来ているんだ。
気分がまだ優れないなら断るがどうしたい?」
「僕は大丈夫だよ。お客さんって誰?」
「それが、警備隊のガーディという方なんだ。
鎧姿でな……知り合いかい?」
僕は自然と笑顔になった。
「ガーディさん!?どこ?どこにいるの!?」
僕は通路をキョロキョロと見渡した。
教員は少し困った顔で、僕に笑いかけた。
「知り合いなんだな。
分かった、分かったから落ち着いて。
今は相談室で待ってもらってる。
呼んでくるから、部屋を整えておきなさい。
しかし、ゼロユイは社交的だな。」
教員が去ると、フクが寝室から飛んできた。
羽を広げ、踊るようにクルクルと回っている。
「フク、まだダメだよ。
先生と一緒に戻ってくるかもしれないから、
もう少し寝室に隠れてないと……。」
「ギィー!」
フクと小さな攻防を繰り広げる中、大きな影が僕たちを包んだ。
「ゼロユイさん、お久しぶりです。
この間はお見舞いに来ていただきありがとうございました。」
ガーディが丁寧に頭を下げた。
それを見たフクはガーディの肩に目にも止まらぬ速さで飛び乗り、甘えるように鳴いた。
「ピィ!」
「あ、ずるいよ!僕が先に……。」
僕の言葉を遮るように、ガーディは僕を抱き上げた。
ガーディの体は少しごわりとしたが、ひんやりとして気持ちが良かった。




