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君といきたい ー不要品AIと小さなフクロウの旅ー  作者: yunimituki
第5章ー落石事故と残されたものー

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第5章-85 小競り合い

ガイが鼻を鳴らしたあと、コウはセキのベッドへ近づき、顔を覗きこんだ。


ガイが慌ててコウに声をかける。


「コウ様、セキ様は先ほど眠られたばかりです。今は休ませてあげてはいかがでしょうか?」


コウはガイを見て笑った。


「ガイさんは本当にお優しいですね。


ほら、セキさん。

ガイさんがあんなに気を使ってくださっていますよ。


寝たふりをするなら、もっと目の動きや寝息にも気を使ってください。」


セキはため息をついて、上体を起こした。


「やはり、敵わんな……。」


「大丈夫ですよ。

昔よりも遥かに上達していますから。

あと数年努力すれば、きっと僕も騙せます。」


「黙れ。」


2人のやり取りを見て、僕とガイは何も言えなくなってしまった。


コウは軽く手を叩いた。


「さあ、セキさん。お客様をお連れしました。

貴方に会いに来てくださったんです。」


僕は、おずおずとセキの前に出た。


「初めまして、セキさん。ゼロユイです。

コウさんの大切な人って聞いて……その、会ってみたくて……。」


セキは眉を顰めた。


「コウの大切な人だと?コウが言ったのか?」


セキがコウを見ると、コウはニコニコと笑っている。


ガイはベッドで、まるで無関係者のようにお茶を飲んでいた。


セキは僕に視線を戻した。


「ゼロユイといったな。

お前は、ずば抜けて頭が良く、黄色い鳥を飼っているそうだな。

どこで文字を習い、黄色い鳥を手に入れた?」


セキの鋭い視線に体が震えた。


「文字は……サクさんと、ガーディさんに習ったよ。

とても面白くて、すぐに覚えたんだ。

フクは……ごめんなさい。覚えてない。」


「覚えていないのはおかしい。

ガイから『こんな世界に連れてこられて驚いてる』と、お前が言っていたと報告を受けている。」


思わず体がビクリと動いた。


セキはさらに目を鋭くした。


「ゼロユイ、お前は何者だ?

そのフクという鳥はどこにいる?

……お嬢様と何か関係があるのか?」


“お嬢様”という単語に、手紙の内容を思い出す。


背中のバッグの中にいるフクが、モゾモゾと動いた気がした。


その動きに、僕は拳をギュッと握りしめた。


「僕は……何か疑われているの?

ただ、学校に行って学んでるだけで……フクだって、水浴びと寝るのが大好きな普通の鳥なのに。」


セキは黙って聞いている。


僕は掠れた声で続けた。


「今日だって、セキさんに会ってみたくて来ただけなんだ。


お嬢様とか……よく分からない。

僕は、フクと一緒に、過ごしたいだけで……何も、悪い事してないよ。


どうして、僕を疑うの?」


後ろから優しくコウが肩を掴んできた。


「セキさん、そろそろ終わりにしましょう。

とても怯えていますよ。」


「コウ、そいつの肩を持つ気か?」


「そうではありません。

セキさん達はそろそろ食事と薬の時間です。


あとで看護師が持って来ますから、きちんと食べてくださいね。


さあ、ゼロユイさん。

僕たちは、そろそろ戻りましょう。」


そう言うと、コウは僕を連れて病室を出た。



ーーーコウとゼロユイが病室を出たあと、セキは舌打ちをした。


「ガイ。何故、加勢しなかった?」


ガイが振り返る。


「セキ様の寝たふりの戦術を、私も見習おうとしたまでです。」


「貴様までコウに屈したか……警備隊も弱くなったものだ。」


「恐れながら、今だけはセキ様のお言葉に、耳を塞ぐ事をお許しいただきたい。」


「よくも、そんな言い訳を……。」


「ホウッ!」


言い争いをしている時、聞きなれない鳴き声がした。


セキとガイは同時に声の方を見た。


扉の前で、フクが鼻を鳴らしながら、床から2人を見上げている。


ガイが口を開く。


「……いつの間に?セキ様、この鳥です。」


「確かに黄色い……フクロウか。」


「この鳥をご存知なのですか?

見たこともない色と形の鳥ですが……。」


セキは頷くとガイに命令をした。


「ガイ、この鳥には手を出すな。

お嬢様が作った可能性が高い。


恐らくお嬢様が手放したか、逃げ出したか……。

もしくは、あの子供を監視させている可能性もある。」


「かしこまりました。

して、この鳥はいかがなさいます?」


「すぐに通路に出せ。

今ならまだ追いつけるだろう。」


「はっ!」


ガイは短く返事をすると、扉を開けた。


フクは廊下に出ると、翼を広げ真っ直ぐにゼロユイのバッグの中へと飛び込んでいった。

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