第5章-78 レイとゼロユイ
ー副裁判長/レイ視点ー
レイは馬車に乗り、裁判所へと向かっていた。
壁にもたれかかり、セキの言葉を思い返していた。
「セキ様、あんな言い方……あんまりです。」
馬車がガタガタと揺れる。
口元を手で押さえた。
「気持ち……悪い。」
手足が震え、寒気がしてきた。
だんだんと吐き気が込み上げてくる。
「ま、まずい。」
御者に合図を送り、街外れの空き地に停車させた。
吐き気を押さえながら、馬車を降りる。
空き地の奥まで走り、そのまま吐き出した。
「はあ、はあ……。
セキ様が見たら、何というか……。」
フラフラとした足取りで、馬車に戻ろうとするが、また吐き気が込み上げてきた。
御者は心配し、病院に行く事を勧めてきたが断った。
「大丈夫です。
裁判所までもう近くですし、休みながら行きます。」
馬車が目の前を走り去っていく。
天気は良く、少し冷たい風が吹いていた。
裁判所に向かって、ゆっくりと歩いた。
だんだんと吐き気は治っていった。
「私は何をしているんだろう?
早く戻らないといけないのに、馬車を降りるなんて。」
ため息を吐いた時、後から声がかかった。
「あの時のお姉……お兄さんだ。」
聞き覚えのある子供の声だった。
振り返ると、やはりあの子供だった。
「君は、保護されたあの子供?」
子供はうなづいた。
「うん。僕、ゼロユイって言うんだ。
それより、大丈夫?顔色が悪いよ。」
ゼロユイの前でしゃがみ、できるだけニッコリと笑ってみせた。
「私は大丈夫です。それより、君はどちらへ?」
「僕は裁判所に行く途中だよ。
今年の卒業を目指してるから、家を借りたりできるか知りたくて。
卒業したら、1年以内に寮を出ないといけないんだって。」
真剣な顔に、呆気に取られた。
「君、まだ子供ですよね。卒業なんて……。」
「実は、料理が出来るようになったら、卒業資格とれそうなんだ。
まだ難しいみたいだけど、話だけでも聞きに行こうと思って。」
「そう、ですか。」
「うん。じゃあ、僕もう行くね。
お兄さん、あまり無理しないでね。」
ゼロユイが行こうとしたのを、慌てて止めた。
「待ってください。子供1人では心配です。
私も裁判所に行くので一緒に行きます。」
「本当?ありがとう。」
ゼロユイは振り返り、照れたように笑った。




