第4章-70 光る木の足元で
僕とコウを乗せた馬車は、光の木の広場の近くに止まった。
僕は1人で光の木の足元まで全力で走った。
花やキャンドルは更に増え、木の足元を埋め尽くしている。
声を張り上げた。
「あの!虹色の鳥さん、白い鳥さん、フクは……フクはまだ一緒にいるの!?」
葉が揺れ、虹色の鳥が少しだけ見えた。
睨むような目つきで僕を見ている。
だが、それ以上の反応はない。
「フク、いる?いるなら聞いて。
今日の朝言った事は本当だから。
君はここにいても良いし……。
もちろん、君が帰って来てくれるなら、僕は歓迎するからね。
じゃあ、それだけだから……またね!!」
走り去ろうとした時、虹色の鳥が甲高い声で鳴いた。
「グワッ!グワッ!!」
その鳴き声に思わず足が止まる。
「え、反応してくれた?」
コウが向こうからゆっくりと歩いて来た。
「ゼロユイさんは凄いですね。
虹色の鳥が返事をするなんて、初めて見ました。」
「そうなんだ。でも、意味は分からないよ。
なんて言ったんだろ……。」
落ち着かなくて手を擦り合わせる。
コウは首を軽く振った。
「いえ、返事をしてくれた。
それが一番の意味になるんです。
それより、伝えたい事は言えたのですか?」
「うん。言えたよ。
フクは…多分、自由な方が良いと思うから。」
「そうですか。
それでは、僕はここから歩いて帰りますから、ゼロユイさんは馬車で帰ってください。
お金は先に払ってありますから。」
「そんな……僕、歩けるよ?」
慌てる僕を、コウさんの温かい手が制した。
「良いんですよ。
僕の家はここから近いですしね。
それに、僕みたいになりたいと言ってくださった方を、一人で帰すわけにはいきません。」
コウがフワリと笑う。
胸の奥がじんわりと温かくなった。
「ありがとう……本当に……。」
「こちらこそ今日はありがとうございます。
気をつけて帰るんですよ。また、お会いしましょう。」
軽い挨拶をすませると、コウは家に向かって歩き出した。
僕は虹色の鳥をもう一度見つめた。
もう葉に隠れて見えなかった。
「僕は帰るよ。フクを……よろしくね。」
背筋を伸ばして頭を下げた。
虹色の鳥は何も答えなかったが、羽ばたく音だけが聞こえた。




