第4章-69 裁判長と白い鳥
ー落石事故現場ー
馬車から降りたセキと調査隊は、落石現場に到着した。
現場には、先に到着した警備隊と医療班が待っていた。
セキは彼らを一瞥し、吐き捨てるように言い放った。
「やはり、コウはいないか。
見間違いではなかったようだな。」
セキは落石現場の入り口の前に立った。
中からはうっすらと血の匂いが漂っていた。
光る石が洞窟内を淡く照らしていた。
セキは振り返り、部下達に静かに指示を出した。
「医療班はここで待て。
警備隊、調査隊は私について来い。」
全員がセキに頭を下げたその時、空から軽やかに白い鳥がセキの隣に舞い降りた。
「キイッ。」
白い鳥は短く鳴くと、洞窟の入り口を塞ぐように翼を広げた。
調査隊達がざわめく中、セキは真っ直ぐに白い鳥を見た。
「お嬢様の鳥か。何の用だ?
私はもう、あの家とは関係ない。
守る必要も、守られる理由もない。
それとも……私を邪魔しに来たのか?」
セキが片手を白い鳥に差し出すと、鳥は甘えるように、セキの手のひらに頭を乗せた。
「邪魔しに来たわけでは無さそうだな。」
セキは白い鳥から手を離した。
だが鳥は翼を広げたままだ。
「翼を閉じろ。中に入……なんだ?」
洞窟内から、ビシビシと音が鳴り始めた。
白い鳥はセキの腕を嘴で掴み、後ろに下がらせるように低く飛んだ。
「何を…!?」
セキの体が引きずられ、洞窟から引き離される。
その瞬間、洞窟の入り口が崩れ土煙が舞った。
土や石が重なり、半分くらいのサイズになってしまっている。
そこにいる全員が沈黙した。
白い鳥はセキの腕から嘴を離すと、セキに頭をゆっくりと下げた。
「……礼を言う。」
セキが呟くと、白い鳥は空へと飛び立っていった。
静まり返った空間にセキの声が響く。
「着いて来い。調査を開始する。」
狭くなった入り口に躊躇いもなくセキは足を踏み入れた。




