第4章-67 コウの体温
馬車が揺れる。
コウが優しく諭す声が耳に響いた。
「ゼロユイさん。次から勝手に他の部屋に入ってはいけません。とても探したんですよ。」
「……ごめんなさい。」
馬車の外は美しい木々が並んでいるが、まったく興味を示せなかった。コウは話を続けている。
「それにしても、ガーディさんの足、かなり潰れていましたね。
救助がいかに大変だったかが分かります。」
コウの顔を見れず、こくりと頷いた。
「ガイさんも、大怪我でしたからね。」
コウは外を見た。
もうすぐ街中に入る。
「ゼロユイさん、そろそろ顔を上げてください。
セキさんがきっと、落石の原因を突き止めてくれる筈ですから。」
少しだけ顔を上げる。
「セキさん?
聞いたことあるけど、誰だっけ?
僕、会った事あったかな?」
コウは軽く笑った。
「やっとお顔を見せてくれましたね。
セキさんは裁判長の事ですよ。
僕にとって大切な人の1人です。」
「コウさんの、大切な人?」
「ええ、もちろん貴方も同じくらい大切ですけどね。」
コウの一言に、少し心がほぐれた。
「それ、本当?」
「ええ、もちろんです。
ゼロユイさん、良かったら膝に乗ってください。
ガーディさんのように抱っこは厳しいですが、抱きしめるくらいなら僕にも出来ますから。」
少し戸惑ったが、コウは笑顔で両手を広げている。
「ありがとう。じゃあ、乗るね。」
「ええ、どうぞ。」
ゆっくりとコウの膝の上に座った。
しっかりと抱きしめられる。
思わず目を細めた。
「コウさんって、温かいんだね。」
「ええ、僕は体温が高いんです。子供みたいでしょう?」
「うん、僕みたい。」
僕とコウはお互いに笑いあった。
馬車は静かに街へと入っていった。




