第4章-64 医者への誘い
僕はコウと一緒に馬車に揺られていた。
コウが窓の外を指差した。
「ゼロユイさん、見てください。踊り子達が踊っていますよ。」
僕は小さくうなづいた。
「うん。綺麗だね。
フクがいたら、きっと一緒に踊りたいって騒ぐかな……フクとも一緒に見たかったな。」
フクの事を思い出し、目を伏せる。
コウは静かに励ましてきた。
「フクさんはきっと戻って来てくれますよ。
ゼロユイさんの元に舞い降りた時、貴方への愛情を感じました。
戻って来てから、踊りを一緒に見に行ってはいかがでしょう。」
フクと一緒に街を巡る。
喜ぶフクの顔を想像したが、すぐに首を横にふった。
「喜ぶとは思うけど、それは難しいよ。」
「なぜですか?」
「黄色い鳥は珍しいんでしょ?
きっと、見つかったら捕まっちゃうかもしれない。
コウさん、お願い。
フクの事、誰にも言わないで。」
コウは笑った。
「大丈夫ですよ。
貴方の友達が捕まるような事はしません。」
「……ありがとう。
ねえ、コウさんはどうしてそんなに優しいの?」
コウに頭を撫でられた。
「ありがとうございます。
ですが、僕はゼロユイさんの方が優しいと思いますよ。」
「そんな事ないよ。コウさんの方が優しい。
僕、コウさんみたいな人になりたいな。」
コウはゆっくりと答えた。
「そうですね。
もしかしたら、医者になれば僕のようになれるかもしれませんね。
人を救う仕事は精神を鍛え、観察力を上げてくれますから。」
「精神と観察力?どういう意味?」
「貴方に医者の素質があると言う事です。」
「本当に?なれるかな?」
「ええ、なれますよ。」
首を傾げる僕に、コウは少し声を出して笑った。
「貴方が僕のようになってくれたら、とても嬉しいです。」
「うん。なれたら嬉しいな。」
「フフッ、やはり貴方はいい子ですね。」
馬車はゆっくりと静かに街を進んだ。




