第4章-58 札束の価値
「フィナさん……。」
ゆっくりと目を開ける。
目の前には玄関の扉がある。
「僕の寮だ。戻ってきたんだ。」
起き上がると、体がキシキシと鳴った。
軋む体を引きずるように、寝室へ入った。
「フク……どこ?」
フクは戻っていなかった。
「探さなきゃ。」
再び玄関へ向かう。
その時、玄関のドアがノックされた。
ドアの向こうから教員の声がする。
「ゼロユイ、体調はどうだ?授業出れそうか?」
「せん……せい?」
なんとか立ち上がり扉を開けた。
僕の顔を見た教員は、一瞬驚いた表情をした。
だが、すぐに真剣な顔をした。
「良いかい、ゼロユイ。
今日は休みなさい。顔色が真っ青だ。
あとでお粥を作りにくる。
お医者さんも呼ぶから、安静にして体を温めておくんだよ。」
僕は首を横に振った。
「今は1人でいたいんだ。
お粥も自分で作れるよ。」
「無理だけはしたら駄目だ。
余計に悪化してしまう。」
「お願い、先生。……お願い。」
教員は戸惑っている。
だが、静かにうなづいた。
「……分かった。
だが、無理は絶対にしない事。
布団でしっかり休むこと。
何かあれば相談室か、別の部屋の生徒に声をかけてもいい。
明日までに良くならないようなら医者を呼ぶ。いいね?」
「ありがとう。」
お礼を言うと、教員は大きな封筒を取り出した。
「それと、これは君宛てに学校に届いたものだ。
体調が落ち着いてからで良いから、確認しておきなさい。」
再度お礼を言い、扉をゆっくりと閉めた。
部屋の真ん中に座り、封筒を開けてみた。
中には分厚く膨らんだ布と、コウからの手紙が入っていた。
手紙を開いた。
⸻
ゼロユイさんへ
昨日は本当にありがとうございます。
体調はいかがですか。
貴方の活躍を、医師や研修生達から聞きました。
お手伝いだけではなく、患者を救っていただいたそうですね。
わずかながら、お礼を送らせていただきます。
また僕の家にも遊びに来てください。
貴方が健康でありますように。
コウ
⸻
手紙を読み終え、布を広げた。
大量のお札が包まれている。
「こんなにたくさん?
でも、今はお金より……。」
札束を抱きしめた。
涙は一滴も出なかった。




