第4章-57 初めての食事
「寒くなってきたね。
ねえ、私の部屋に来ない?
少し落ち着いて話したいの。」
「僕も、もっと話したい。」
メイドに招かれ屋敷の中に入った。
階段をのぼり、部屋の前まで来た。
メイドが扉を開ける。
「どうぞ。温かい飲み物も用意するからね。」
メイドはお茶とお菓子を僕の前に並べた。
「これ、お嬢様の担当医が好きなお茶なの。
こっちは私が好きなお菓子で、よく恋人が持ってきてくれるの。」
僕はお茶の香りをかぎ、口に入れてみた。
スッと喉を通り、暖かな熱がお腹に移動した。
あっという間にカップが空になる。
「の……飲めた。」
次にお菓子を口に入れてみた。
お菓子は消えずに口に残っている。
試しに口を動かしてみると、お菓子が歯に当たり、パリンっと口の中で割れた。
飲み込むと、喉に少し引っかかりながらも、お腹に流れていった。
「食べられた。」
お菓子を次々に口に入れた。
全てがお腹に流れていく。
むせながらも、だんだんと食べ方が分かってきた。
メイドは僕を見てクスクスと笑った。
「そんなに美味しかったの?」
「信じてくれるか分からないけど、食べるのも、飲むのも初めてなんだ。
いつもは食べられないのに。」
僕の言葉に、メイドは目をぱちくりとさせた。
「いつもは食べられないの?
なんだか、恋人みたい。
私の恋人も食べられないの。」
メイドは、僕のカップに新しくお茶を注ぎ直した。
お茶を受け取りながら、気になっていた事を聞いてみた。
「メイドさんの恋人って……誰?」
メイドは少しはにかみながら答えた。
「私の恋人はね。
ガーディっていうの。
君みたいにまっすぐで、綺麗な目をしてるんだ。」
思わず前のめりになった。
「ガーディさんって、鎧姿の人?」
「ガーディを知ってるの?」
「知ってるよ。恩人なんだ。」
メイドに、自分がガーディに保護された事や、温かいお風呂やベッドを用意してくれた事を話した。
「そっか。本当に、ガーディらしい。」
メイドは静かに目を閉じ、何かを思い出しているようだった。
僕はもう1つ疑問をなげた。
「メイドさん。
ガーディさんって鎧は脱げないって言ってたよ。
どうして綺麗な目だって分かるの?」
メイドは目を開き、少し間を置くとお菓子を1つつまみあげた。
「この屋敷はね。
不思議な事がたまに起きるの。
それと、私の事はメイドより、フィナって呼んでくれたら嬉しいな。」
そう言うと、フィナはつまんだお菓子を美味しそうにぱくりと食べた。
「君の名前も教えてくれる?」
「うん。僕は、ゼロユイだよ。」
「ゼロユイ?素敵な名前ね。」
フィナはニコリと笑った。




