第4章-51 落石事故発生
ー裁判長室ー
ガイは報告書を読み終え、書類を閉じた。
「報告は以上です。セキ様、レイ様。」
報告を静かに聞いていたセキの声が響いた。
「わずかだが犯罪数が増えたな…。」
セキはテーブルを指で軽く叩いた。
ガイが頭を下げる。
「警備隊の不手際、申し訳ございません。
これより街の警備の人数を増やし、更なる強化に…。」
セキが軽く手を上げ、ガイの言葉を制した。
「強化はしなくていい。
増えたといっても僅かな差だ。
それに、警備を強化すれば住人への安心にもなるが、不安にもなる。
警備隊の疲労による生産性も下がる。あまり利点がない。」
「失礼いたしました。」
ガイは背筋を伸ばした。
セキが立ち上がり、ガイの肩に軽く触れた。
「ガイ、警備隊はよく働いてくれている。
お前の指導のおかげだ。礼を言う。」
ガイは肩を僅かに震わせた。
「なんと、もったいないお言葉……。
私は任務に戻ります。」
ガイは敬礼し、扉へ向かった。
「待て。まだ聞きたいことがある。」
ガイは足を止め、セキに向き直った。
「はい。なんなりと。」
セキは腕組みをして淡々と話し出した。
「最近お前の社宅に、コウと子供が検診に来ただろう。
その子供について聞きたい。どのような人物だ?」
ガイの眉が僅かに上がる。
「私が以前ご報告した、黄色い鳥を連れた子供です。
現在は学校に通っていますが、異例の飛び級をしたそうです。
コウ様からは、その子供とは検診の日が初めての接触だったと伺っております。」
セキはしばらく考えたあと、再び椅子に腰掛けた。
「そうか、お前が報告した子供と、コウが話した子供は同一人物か。
奇妙なことだ…ガイ、今度その子供を…。」
セキが言いかけた時、裁判長室の扉が急に開かれた。
警備隊の若者が入ってきた。
「セキ様!レイ様!ご報告が!!」
ガイが若い警備隊員を怒鳴りつける。
「貴様!鈴も鳴らさず、勝手に裁判長室にはいるなど、何を考えている!?」
若者は頭を必死で下げたあと、ガイに叫ぶように答えた。
「ガイ隊長、大変申し訳ございません!しかし、緊急事態なのです。
セキ様!レイ様!!
採掘現場にて落石事故があり、死者多数、怪我人や現場に取り残された作業員が数多くいらっしゃいます。
どうかご指示を!!」
若者の報告にセキが机を強く叩きつけた。
一斉に全員の視線がセキに集まる。
「ガイ、全ての警備隊を集めろ。1秒も惜しい。
裁判所の警備が居なくなっても構わん。急げ!!」
「承知いたしました。
おい、お前もだ。着いてこい!!」
ガイは若い隊員を連れ、走って裁判長室を後にした。
セキはレイの顔を見る。
レイの体は僅かに震えている。
「今回の件は何が原因だと思う?」
レイが答える。
「分かりません。
ですが、甚大な被害になる事だけは分かります。」
「間違いない。
レイ、書類を作れ。
街の馬車を怪我人と、警備隊の移動に使用させる。
裁判所にある馬車だけでは足りん。
病院から事故現場までの通行を制限させろ。
救護馬車を最優先で通せ。」
「はい。すぐ用意します。」
レイは急いで新しい紙を取り出しペンを走らせた。




