第3章-48 クイズの答え
コウの家の扉の前にかかっている鈴を鳴らした。
静かに玄関が開き、コウが出てきた。
「ゼロユイさん、来てくださったのですね。
フフッ、昨日ぶりですね。」
コウの穏やかな声に表情が緩む。
「うん。昨日ぶり。」
コウに招かれ家に入る。
大きな窓がたくさんあり、外からの光で溢れていた。
家具の多くは木製で揃えられ、柔らかそうなソファーやクッションなどもあった。
「そちらのソファーにおかけください。
今、お茶を入れますからね。」
コウがキッチンに立つ。
お茶を入れる姿が1枚の優しい絵のようだった。
「お待たせしました。
ここまで来るのは、疲れたでしょう。
このお茶は疲れを緩和してくれるんです。」
コウはカップをテーブルに2つ置き、僕の隣に座った。
「ゼロユイさんは、乾杯をした事はありますか?」
僕が首を横にふると、コウはカップを片手に持った。
「それなら、やってみましょうか。
さあ、真似してください。
カップ同士を軽く合わせるんです。」
僕もカップを持ち、コウのカップにゆっくりと近づけた。“コツン”っと軽い音が鳴る。
コウは少しお茶を飲んだ。
僕も真似してカップに口をつける。
「これが乾杯です。よく出来ましたね。」
コウは頭を軽く撫でてきた。
コウの手の温かさに力が少し抜けた。
「コウさん、乾杯にはどんな意味があるの?」
コウは撫でながら答えた。
「いろいろな意味がありますが…今回は歓迎ですよ。
あなたが来てくれて嬉しいんです。」
顔がだんだんと熱くなるような気がした。
「僕も……嬉しいよ。」
そう言うと、お茶の香りをこれでもかと吸い込んだ。
爽やかな香りが少しだけ落ち着きをくれた。
コウは微笑むと、棚から銀色のバッグを取り出した。
あの時と同じように、ぎっしりと医療道具が収められている。
「ゼロユイさん。
少しクイズを出させてください。
僕が昨日、お話しした道具の役割を覚えていますか?
覚えている範囲で構いませんので、僕に教えてほしいんです。」
「うん。覚えてるよ。」
僕は1つずつ道具に指をさした。
「これは消毒液。
前に僕が出せなかったやつで、道具を使ったり、体に何かを入れる時、これで洗うんだ。
この細いのが麻酔で、3本で1日眠らせる事が出来るんだよね。
このナイフがメス。体を切るから、真っ直ぐに持つのが大切って話してた。」
次々に説明する僕の言葉を、コウは静かに聞いていた。
「それで、これが注射器……。」
言葉につまる。
落として割ってしまった記憶が鮮明に蘇ってきた。
「ごめんなさい。」
僕が謝ると、コウは何も言わずバッグを畳んだ。
「ゼロユイさん。お見事です。」
僕が顔を上げると、コウは静かに笑っていた。




