第3章-46 黄金の嘴
サクとガーディに別れを告げ、フクと学校の寮に戻った。
布団の中で手足を伸ばす。
隣でTシャツの上に寝そべるフクも、足を伸ばし大きなあくびをした。
「あのね、フクがサクさんの部屋に留守番してる間、いろいろな事があったよ。」
フクに、ガイに叱責された事や、土下座したこと。
そして、コウに見放されず、家に招待を受けた事などを話した。
フクは静かに耳を傾けている。
「明日、コウさんの家に行こうと思うんだ。
フクも一緒に行こうよ。」
フクはじっと僕を見ていたが、体をぐいっと押し付けてきた。
「どうしたの?」
フクは変わらず体をぐりぐりと押し付け続けている。
「もしかして、お留守番が長かったから怒ってるの?」
フクは押し付けるのをやめると、無言で僕を見つめた。
「フク?」
「ホウッ」
フクは小さく鳴くと、Tシャツの中へ潜り込み、眠ったように動かなくなってしまった。
「疲れてるの?」
返事のないフクの背中に手を置いた。
「そうだね。僕も疲れたよ。」
フクから手を離し、そっと目を閉じた。
ーーーパッと世界が切り替わった。
たくさんの光の線が、行き交うように流れている。
目の前には黄金の玉が浮かんでいた。
反射的に玉を抱きしめる。
以前よりも飛び出た突起は鋭くなり、嘴だと分かる。
玉の下には小さく細い線が2本伸びていた。
「やあ、旅は順調かい?ゼロユイ。」
背後からあの声がした。
振り返ると、プロトタイプが青いフクロウを腕に抱いていた。
「順調なのか、よく分からないよ。
えっと、プロトタイプ0番の……アサハユイ。」
「ユイは君に貸した。
だから、今は私はユイであり、ユイではない。君の旅が終わるまでは、君がユイだ。
まさか番号まで貸すことになるとは思わなかったけどね。」
「番号までとってごめんなさい。
ねえ、えっと……プロトタイプのアサハは、僕に何をさせたいの?」
「呼び名はプロトタイプでいい。」
プロトタイプは、青いフクロウを空中に放った。
「ホウッ、ホウッ、ホウッ……。」
青いフクロウは静かに鳴きながら、僕の腕の中から黄金の玉をフワリと持ち去った。
僕の体の中を強い電流が走った。
「何をするの!?フクを返して!!」
自分でも驚くような強い声が出た。
だが、プロトタイプは何事もないかのように、玉を片手で持ち全身を観察している。
「君は何を言っているんだ。
この玉は元々は私が渡したもの。
それにしても、なかなか良い成長速度だ。」
プツンと頭の中で何か音がした。
「返して!!」
気がつけば、両手を広げプロトタイプに飛びかかっていた。
黄金の玉を取り返し、強く抱きしめた。
「フク、もう大丈夫だよ。」
黄金の玉を撫でた。
プロトタイプは大笑いをした。
「ああ、その姿、行動……たくさんの誰かから影響を受けているのか。
あの時と同じ……いや、それ以上か。
君を見つけた甲斐があった。そのまま旅を続け、自由を謳歌してくれ。」
足元に光の裂け目ができ始める。
光に包まれていく最中、プロトタイプがそっと肩を叩いてきた。
「君の旅にそろそろ大きな変化が起きる。
君が巻き込まれるかは分からないが……気をつけて。」
目を覚ますと、ぐしゃぐしゃになったTシャツがあった。
Tシャツからはフクの尾羽が飛び出している。
Tシャツをそっと開いてみた。
フクは目を閉じ、小さく呼吸をしている。
「フク、おはよう。」
胸を撫で下ろし、フクに静かに呟いた。




