第3章-41 サクの提案
サクの社宅に招かれた。
「ほら、入れよ。座って話そう。」
僕は部屋に入り、椅子に座った。
バッグを開けると、フクは僕の膝に乗ってきた。
サクはテーブルにグラスを2つ出し、氷とお茶を入れた。
「飲むか?」
「……うん。」
お茶を受け取った。
手にヒヤリとした冷さが伝わってくる。
サクは片手でお茶を飲みながら、窓の外を見た。
「さっき、子供が走り回ってたって、みんなが騒いでたから、何ごとかと思ったよ。」
「……ごめんなさい。」
「気にすんな。
保護した子が怖がって逃げたが、今は保護し直したから平気だって話しといた。
そのうち収まるだろ。」
「……ありがとう。」
サクは僕に笑ってみせた。
僕も笑おうとしたが、まったく笑えなかった。
サクは笑うのをやめ、僕の背中を軽く叩いた。
「何があったんだ? 」
サクを見つめた。
サクは真剣な顔をしている。
「とんでもない事、しちゃって……。」
「とんでもない事?」
僕はゆっくりとサクに今までの事を話した。
ガーディとサクにペンをプレゼントしに来た事。
門番に入れてもらえず落胆した事。
医者のコウと会った事。
社宅に来たが、2人とも居なかった事。
そして――。
「ガイ隊長とコウさんの目の前で、注射器を割って、逃げて……きちゃった……。」
静かに聞いていたサクは、頭を抱えた。
「コウ様に、ガイ隊長か。
それは、なかなかやらかしたな。
まあ、コウ様はそれで怒るとは思わないが……どうすっかな。」
サクはしばらく考えていたが、スッと立ち上がった。
「仕方ない。乗り掛かった船だ。
ゼロユイ、一緒に謝りに行こうか。」
「い……嫌だ……怖い……。」
サクは首を横に振った。
「いや、こういうのは早い方が良い。
それとフク、お前はここでバッグと一緒に留守番だ。」
「ホウッ!?」
フクは目を見開いている。
「不満そうだな。でも、ダメだ。」
「ギー! ギー!!」
フクは強く抗議した。
だが、サクはフクの嘴を指で掴み、鳴き止ませてしまった。
「勘違いすんな。
フクが邪魔な訳じゃない。
だけど、ゼロユイが自由に動きにくくなるだろ。」
サクが指を離すと、フクはへたり込むように座り込んだ。
「ほら、ゼロユイ。腹括って行こうぜ。」
サクが手を出してきたが、その手を握れなかった。
フクを見ると、寂しげにじっと僕を見ている。
「フク……ごめん。
僕のせいで迷惑かけちゃった。」
フクは何も言わない。
「怖いけど、このままじゃダメだよね。
少しだけ、待っててくれる?」
「ピィ……。」
フクは力無く鳴いた。
僕はフクをギュッと抱きしめた。
「また、あとでね。」
サクが玄関で静かに待っている。
僕はフクから手を離し、サクに小さく頷いた。




