第3章-42 謝罪
サクと共にガイの社宅の前まで来た。
「震えてるぞ、大丈夫か?」
「や、やっぱりダメかも。」
僕はサクのズボンを強く握った。
「フクと約束したんだろ?」
「う……うん。」
僕はズボンから手を離した。
「よし。」
サクはガイの社宅の鈴を握った。
ここにくるまで、ずっと体の震えが収まらなかった。
背中にフクの重さと体温がなく、寒くも感じる。
「フク……。」
そう呟いた時、サクが鈴を鳴らした。
しばらくして、ガイが出てきた。
「誰だ?」
「ガイ隊長。事務員のサクです。
お忙しいところ失礼いたします。
本日はゼロユイと謝罪に参りました。」
サクが大きく頭を下げる。
僕も同じように頭を下げた。
一呼吸おいたあと、サクが謝罪をはじめた。
「ガイ隊長、事情はゼロユイから伺いました。
この度は真に……。」
「待て。」
ガイが片手をあげてサクの謝罪を制した。
ガイが僕を見下ろす。
「いったい、どの面下げて戻ってきた。
しかも、他人に謝罪をさせて、恥ずかしくはないのか?」
体が大きく震えた。
サクが前に出る。
「ガイ隊長、ゼロユイはまだ1歳にもなっておらず……。」
「なぜお前さんが、謝罪する?」
「初日に、この子を任せていただいたからです。」
「それは、あの場限りだ。
教員ならまだ分かるが、お前さんは関係ないだろう?」
2人のやり取りに体が震えた。
僕は、震えを無理やり押さえつけるように、身体中に力を込めた。
「あ、あの!!」
ガイとサクが僕を見た。
言葉を絞り出す。
「コウさんの注射器、割って……ガイさんの部屋、めちゃくちゃにして……逃げて、ごめ……ごめんなさい。」
地面に頭をつけて必死に謝った。
サクが手を差し出そうとするが、ガイに睨まれ、すぐに引っ込める。
その時、柔らかい声が場の空気を変えた。
「やっと戻って来たのですか?遅かったですね。」
顔をあげると、コウがドアから顔を出している。
その顔は出会った時のように穏やかだ。
「助手が診察中にいなくなるのは初めてです。」
「コウさん。僕、本当に……。」
コウは僕の隣に来ると、背中を優しくさすった。
驚いてコウを見る。
コウは背中をさすり続けながら、視線をガイに送っていた。
「ガイさん。もう一度この子を家に入れてあげてくれませんか?
少しお話ししたい事があります。」
「その子供を許すおつもりですか?」
コウとガイが睨み合うように向き合っている。
冷たい風が吹き、短くも、長くも感じられる沈黙が流れた。
「……かしこまりました。」
ガイは腕をほどき、観念したように扉を開けた。




