第3章-39 連行
コウと手を繋ぎ直し、サクの社宅へと真っ直ぐに向かった。
「お医者さんって、みんなガイさんよりも偉いの?」
コウはクスリと笑った。
「そんな事はありません。
ただ、僕はたまたま裁判長と仲が良いんです。
ですから、ガイさんも僕に気を遣ってくださってるんですよ。」
思わず目をぱちくりさせた。
「裁判長ってどんな人?
あまり優しくない人だって聞いたよ。」
「おや、そんな事を?
フフッ、確かに優しくはないかもしれませんね。
優しくては出来ない仕事ですから。
ですが、とても立派で素晴らしい人です。」
サクの社宅の前まで来た。
だが、“外出中”というプレートを見て、再び肩を落とす。
「ごめんなさい。無駄足させちゃった。」
コウに謝ると、コウは僕をしっかりと抱きしめた。
「何も謝る必要はありませんよ。
それより、よくここまで頑張りましたね。
ペンは、また機会をみて渡しにくれば良いんです。」
コウの抱擁に顔が熱くなる。
だが、次の一言で熱は一気に冷めた。
「さあ、次は僕に付き合ってくださいね。」
「……コウさんに、付き合う?」
コウはゆっくりと、手を離した。
「貴方は今日、私の助手としてこの敷地に入りました。
その役目は果たさなくてはいけません。
ガイさんの元に向かいますよ。」
ガイの鋭く光る剣を思い出す。
思わず身震いした。
バッグの中のフクも震えているのか、振動が微かに伝わってくる。
「また、ガイさんに会うの?」
「ええ、それが今日の目的ですからね。」
僕は首を横に振った。
「でも僕……何も分からないよ。」
「大丈夫です。
僕の横にいるだけで良いんです。
門番の方に研修をさせたと言い訳するだけですから。」
「横にいるだけ?」
「ええ、それだけです。
さあ、そろそろ参りましょう。
ガイさんの社宅はあちらです。」
コウは手を差し出してきた。
コウの手をとる際、手が震えた。
「良い子ですね。」
コウの穏やかな笑顔が少しだけ怖く感じた。




