第2章-32 雨不足の行方
ー裁判長室ー
ガイは裁判長のセキに報告書を読み上げていた。
「雨が少ない事による作物の被害が心配されておりましたが、セキ様が予算を回していただいたことにより、水の確保が早く出来た模様です。
コウ様を始めとした医療チームからも、薬を通年より多く製造し、対策を進めていると連絡があり……。」
セキはガイの報告を静かに聞いていた。
隣に座る副裁判長のレイも真剣に聞いている。
「以上です。セキ様、レイ様。」
ガイの話が終わると、セキはゆっくりと頷いた。
「やはり予算を回したのは正解だったな。
また、何かあれば随時報告をしろ。」
ガイは背筋を正し敬礼をした。
「ハッ!承知いたしました。
実はもう一件、まだはっきりした事は言えませんが、ご報告がございます。」
「聞こう。」
「前回の黄色い鳥を連れた子供の件ですが、その子供が異例の飛び級をした模様です。」
「異例の飛び級?」
「はい。私の尋問には、
“こんな世界に連れて来られて驚いている”
そのように話していました。」
「こんな世界……だと?どういう意味だ。」
セキの声色が明らかに変わる。
「詳しくは分かりませんが、念のためお伝えさせていただきました。」
セキは暫く考えたあと、軽く手を上げた。
「ガイ、今の件は一旦保留にする。
ご苦労だった。」
ガイは深く頭を下げ、裁判長室を後にした。
ずっと黙っていたレイがセキに話しかける。
「セキ様、私はそんな小さな子供や、小鳥を、そこまで警戒する必要があるのか疑問です。
……飛び級も、稀ですがありますし。」
レイの問いにセキは机を軽く指で数回叩いた。
「確かに問題が無い場合もある。
だが、確認はしておく必要はある。
過去の件や、お嬢様に関係しているかもしれないからな。」
レイは少し身震いをした。
「過去の件は私は詳しくありませんが、お嬢様とは、あのお嬢様ですよね?
私が就任した際に、ご挨拶に伺った……。」
「そうだ。
お前はあの家のメイドを目で追っていたな。」
レイの顔が赤くなる。
「そ……それは、忘れてください。
そもそも、なぜお嬢様に関係があると確認をしなくてはならないのか、私には分かりません。」
「お前はまだ知らなくて良い。
レイ。まだ何もしていない子供と鳥を連れて来させ問いただすか、直々にお嬢様に話を聞きに行くか……どちらが良い?」
セキはレイにわざとらしく笑いかけた。
レイは体を少し丸めた。
「……セキ様に、お任せいたします。」
「安心しろ。直ぐにはやらない。
レイ、棚の資料をとってくれ。」
「かしこまりました。」
レイは急いで資料を手渡した。




