第2章-31 逃げ道の窓
僕は寮の自室に戻ってきた。
お風呂も沸かす気力もなく、布団に潜り込んだ。
フクが僕を覗き込む。
「フク……あのね。
今日、ガイさんに会ったよ。」
フクは、じっと話を聞いている。
「それで、僕の出自とか存在を疑われたんだ。
何もしてないのに……。」
体を起こし、フクを抱き上げた。
そのまま、リビングにある小窓にフクを連れて行った。
「よく見ててね。この窓の鍵を外せば……。
ほら、押せば簡単に開くんだ。
フクにも開けられるし、出入りする大きさも充分にあるよ。
ここの鍵はずっと開けておくね。
僕が不在中に何かあったり、僕が帰らない日が続いたら、迷わず逃げて。」
冷たい風が窓から吹き込んでくる。
それまで黙っていたフクは激しく鳴いた。
「ギー!ギー!!」
手にフクの爪が食い込む。
「わっ、やめて、痛いよ。
ごめん。いきなり開けたから寒かったよね。」
窓を閉めるが、フクは落ち着かない。
あらかた暴れた後、翼を広げ、僕の体にひしっとくっついた。
「もしかして……離れたくないって暴れたの?」
「……ピィッ。」
フクは消え入りそうな声で鳴いた。
「不安にさせてごめん。
僕もずっと君といたいよ。
でも、安全は確保しなくちゃ。
だから、ここの鍵は開けっぱなしにしておくね。
何も無ければ、ただの締め忘れだから、僕のうっかりで終わるんだよ。」
フクは微動だにせず、ずっとしがみついている。
「フク……大丈夫だよ。
僕たち何も悪いことしてないんだから。
そうだ。一緒にお風呂に入ろう。
今日は水風呂にするから、一緒に水を飛ばし合おうよ。」
フクは少し沈黙したあと、バサバサと肩に飛び乗った。
「ホウッ!」
「そうこなくっちゃ!」
急いで風呂に水を溜める。
風呂に入り、両手を広げた。
「フク、おいで!」
フクは迷いなく僕の胸に飛び込んできた。
「いくよ!」
「ピィッ!」
水を両手で掬い、雨のように天井に飛ばした。
フクは負けじと壁に水を飛ばしている。
不思議と水は温かく感じた。




