第2章-30 こんな世界へ
ガイの講義を受けた生徒達は、まばらに部屋を出て行った。
今日の授業はこれでお終いらしい。
今日習った事や、ガイの言葉を思い出しながら、一人で寮に戻ろうとバッグを背負った。
「ゼロユイ、こちらに来なさい。」
声の方に振り返る。
教員が手招きしていた。
「先生、どうしたの?」
急いで教員の元に向かう。
「ついて来なさい。」
案内された場所は、教員達が使う休憩スペースだった。
入った途端に、足を止めた。
ガイが椅子に腰を下ろし、お茶を飲んでいた。
「また会ったな。二人にさせてくれ。」
ガイがそう言うと、教員は頭を下げていった。
僕は目を合わせられず、下を向き挨拶をした。
「あ……あの、お久しぶりです。」
ガイは鋭い視線を向けた。
「お前さんは、声が小さい。モゴモゴするな。」
「お……お久しぶりです!」
自分でも驚くような、大きくひっくり返ったような声が出た。
恥ずかしくなって、思わず縮こまる。
「座れ。」
ガイはお茶をテーブルに置き、近くの長椅子に僕を座らせた。
「飛び級した生徒がいるとは聞いていたが、まさかお前さんだったとはな。」
「う……うん。そうです。」
小さく返事をした。
ガイは軽く息を吐いた。
「そんなに怖がるな。ほら、茶を入れてやる。」
ガイは給湯室からお茶を一杯入れ、僕に手渡した。
とても熱く、湯気が目に入ってくる。
「異例の飛び級、奇妙な黄色い鳥。
親すら分からず、裸で放置されていたのに動揺もしないその精神力。
お前さんは一体何者なんだ?」
ガイはじっと返事を待っていた。
お茶の湯気が少しずつ減っていく。
「ごめんなさい。分からない。
でも、あの鳥は……フクはとても良い子だから、あまり悪く言わないで。」
ガイは残っていたお茶を飲み干すと、いきなり隣に座り、顔を覗きこんできた。
お茶をこぼしそうになり、慌ててテーブルの上に置いた。
「あの鳥はどこにいる?」
「あ……その……に、逃した……。」
「嘘が下手くそだ。
どうせ寮か、ガーディか、あの事務員にでも預けたんだろう。」
そう言うと、グイッと肩を掴んできた。
前回よりも力が強く感じられた。
「やはり、お前さんには何かある。
何を隠しているんだ?」
肩が少しミシミシと音がした。
痛みで思わず叫んだ。
「い……痛い!
別に何も隠してないよ!
僕だって、いきなりこんな世界に連れて来られてビックリしてるんだ!!」
「こんな世界に……連れて来られた?」
慌てて、ガイから離れる。
ガイは目を逸らさずに僕を見ている。
「ち……違う、この世界に生まれて、ビックリって意味で……。」
「やはり何か隠しているか。」
掴まれていた肩がジンジンする。
手で肩を押さえながら、後ろに後退した。
ガイは鼻を鳴らした。
「安心しろ。
俺は犯罪を犯してない者を切り捨てるような事はしない。
ただし……お前の正体が、誰かを傷つけるものなら、その時は迷わん。」
ガイは振り返りもせず出て行った。
そのあとに入って来た教員が、笑顔で僕を迎えに来た。
「ゼロユイ、君は本当に何者なんだい?
まさかガイ隊長と知り合いだなんて、すごい事だよ。
ん? どうしたんだい?」
僕は顔を上げる事が出来なかった。
テーブルのお茶はすっかり冷え切っていた。




