第2章-29 ガイの演説
授業は淡々としていた。
法律の授業では、人を殺さない、盗まない、意図的に傷つけない。
そんな、知っている内容ばかり並んでいた。
ただ、事件があった際、被害者が加害者をどうするか決められる事。
裁判長は殺されても加害者が罰せられないなど、知らない制度もあった。
僕はノートもペンも取らなかった。
集中して聞けば、データとして自然に頭に入ってくる。
ノートを取らない僕に教員が話しかけてくる。
「ゼロユイ、ノート取らなくて大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。しっかり覚えてるから。」
「そうか、それは凄いな。
だけど、ノートくらいは取りなさい。
今覚えてても、あとから忘れたら勿体無いぞ。」
「大丈夫だよ。
先生の話、分かりやすいから聞いてる方が覚えられるんだ。」
「そうか。ゼロユイは褒め上手だな。」
教員はニカリと笑い授業に戻った。
僕のことが奇妙に映ったのか、それとも不快だったのか、僕の隣に座る生徒は少なかった。
ーーー午後になり、いよいよ特別授業が実施される事になった。
他の生徒達と別の教室に移動した。
そこには椅子がきっちりと並べられ、正面には壇上が設置されていた。
場所は決められていないため、再び後ろの席に座った。
他のクラスも来ていたが、自分と似た年齢の子供は一人もいなかった。
教員が壇上に立つ。
「皆さん、本日は警備隊のガイ隊長が、皆さんに警備隊の仕事について話に来てくださいました。
皆さんにとって貴重な経験になるはずです。
ガイ隊長、よろしくお願いいたします。」
入れ違いで壇上に上がったガイは、以前よりさらに大きく見えた。
体が無意識に震えた。
ガイは生徒達を一瞥した。
僕と一瞬だけ目が合ったが、すぐに視線を全体に戻し、語り出した。
「今日は若い諸君に、警備隊の仕事について説明する。
警備隊は、施設や街を警備するだけだと勘違いされがちだが、実際は違う。
事故や事件があれば駆けつけ、必要があれば剣を振るい、命を投げ出す覚悟のある者だけがなれる誇り高い仕事だ。
だが、剣を振るう相手を間違えてはならない。
冤罪をした者を斬る事は許されない行為だからだ。
裁判長のセキ様が、裁判長は殺されても罪にはならないと法律を作ったのも、その冤罪対策や全ての責任を取るという覚悟の現れである。」
ガイの言葉を生徒達は息を呑んで聞いている。
僕もいつの間にか前のめりになって聞いていた。
「将来、この中に警備隊に入りたい者がいるとするならば、覚悟と誇りを持ってくるが良い。
中途半端な者はいらない。
以上だ。」
生徒や教員から拍手が湧き起こる。
ガイは無言で壇上を降りて行った。




