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君といきたい ー不要品AIと小さなフクロウの旅ー  作者: yunimituki


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第2章-27 湿地帯の屋敷

夜になり、フクと一緒に布団に潜り込んだ。


飛び級証明書をもらったあと、教員と一緒に料理を作り、お風呂の沸かし方や洗濯のやり方などを学んだ。


「フク……今日は疲れたよ。」


隣で丸くなっているフクを撫でる。


フクは虹色の羽をお腹に敷き、Tシャツに包まれている……いつものスタイルだ。


「すっかり羽もTシャツも宝物だね。」


窓の外を見る。

朝と違い、光る木がより鮮明に見えた。


「……あの鳥達、元気かな?」


「ホウッ」


フクが静かに鳴いた。


「フクも会いたいよね。今から行こうか?」


フクを抱こうとした時、目の前がぐらりと揺れた。


「……あれ? なんだか……体が重い……。」


そのまま、僕はパタリと布団の上に倒れ込んだ。



——冷たい風を感じて目を覚ました。


「あれ?」


あたりを見渡すと、そこは美しい湿地帯だった。


後ろを見れば、光の木が虹色に輝いている。

だが、その姿は知っている木よりも小さく、あの鳥達もいなかった。


木の奥には、立派な白い屋敷が見える。


「……フク? フク、どこにいるの!?」


あたりを探すが、フクの姿もバッグもない。


急いで木の脇を駆け抜け、屋敷の扉を叩いた。


「誰かいませんか!?」


だが、誰も出ない。


そっとドアノブを回してみた。


ドアは音もなく開いた。


室内は広く、ソファーやテーブルがたくさん置かれている。


「ここ……どこ?」


ひたすら歩き回る。


広いキッチンや、巨大な風呂が二つもある。


二階へと続く螺旋階段に辿り着いた。


引き込まれるように、だが慎重に階段を登った。


階段を登ると部屋がいくつもあり、一番奥にはひときわ大きな白い扉と黒い扉が二つあった。


「この扉は……。」


白い扉に手をかけようとした時だった。


「ニャー……。」


動物の鳴き声がした。


振り返ると、二本の尻尾を持つ真っ黒な猫がこちらを見ていた。


「君は……猫、だよね?」


黒猫は爪を立てて飛びかかってきた。


「わあっ!」


顔を軽く引っ掻かれ、血が滲んだ。


血は滲む先からデータとして分解された。


黒猫は一度距離を取り、体勢を立て直している。


来た道を急いで引き返す。


たくさんの扉の前を通り、階段の目の前に着いた時、一番近い扉が開いた。


部屋から二十代前半くらいの美しい銀髪の女性が出てきた。


光の加減によって金髪にも見える。


「……子供?」


女性が僕の顔を覗き込む。


僕は思わず美しさに見惚れた。


「ニャア……。」


後ろからは黒猫が迫ってきている。


女性は黒猫に気づくと、僕を庇うように前に出た。


「ニャア、深夜に暴れたらだめだよ。

お嬢様に見られたら、ニャアでも怒られちゃう。」


ニャアと呼ばれた黒猫はぴたりと止まった。

そして、僕を振り返りながら奥の部屋へと戻っていった。


「大丈夫? どうしてここにいるの?」


女性は僕の頬を優しく撫でた。

優しい手つきと美しさに、再び目が離せなくなる。


「あの……僕……学校にいたんだ。

気づいたらここに……。

その、フクを……このくらいの黄色い鳥を探してて……。」


やっと絞り出せた声は途切れ途切れだった。


女性は微笑んだ。


「大丈夫。お嬢様の家はね、不思議な事がたまに起こるの。

廊下、寒いね。部屋に入って。」


女性の穏やかな声に、だんだんと落ち着いていく。


部屋の中に入ると、女性はランプをつけた。


優しい明かりが部屋を照らす。


室内は広く、とても整っていた。


化粧台には、上品な美しいアクセサリーが並んでいる。


「……わあ……綺麗だね。」


アクセサリーを眺めると、女性ははにかむように笑った。


「うん。本当に綺麗なの。

全部、私の恋人がくれたんだ。手紙もたくさんくれるの。」


女性は指輪を一つ手に取った。


「これは一番大切……彼そのものだから。」


指輪を握る女性は、女神のように見えた。


「そういえば、君は誰?

生まれたばかりに見えるけど……。

私の子じゃないし。」


「うん。僕は……その……。」


うまく話せない。


女性は僕の頭を撫でた。


「ごめんね。私から名乗らなきゃ。

私はここでお嬢様のメイドをしてる……えっ? どうしたの?」


女性に言われて体を見ると、足や手が小刻みに震えている。


女性は布団の毛布を僕の体にふわりとかけた。


「風邪かな?


明日、医師のコウさんが来てくれるの。

お嬢様の主治医でね、とても優しい人なんだ。


今日は私の部屋で休んで、朝一番診てもらおう。

お嬢様には私から説明するから。」


「だ……大丈夫だよ。」


必死に震えを抑えようと体に力を入れたが、そのまま体がぐらりと揺れ、視界が一気にぼやけ始めた。


「だ……大丈夫?しっかりして。」


女性の心配する声が、やけに遠くに感じた。

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