第2章-26 不器用な天才
ー職員室/教員達ー
職員室ではゼロユイについて、会議が開かれていた。
驚きの声が次々に飛び交う。
「信じられない……それは本当ですか?」
「本当ですよ。
結局、上級者用の国語と数学は全て解かれてしまいました。
まだ法律や家事、伝統などについては理解してないようですが……きっとすぐ覚えますよ。」
「体力測定は?」
「そちらは標準でした。」
「それでは、器用さは?」
「粘土や折り紙をやらせましたが、最悪の出来でした。
折り紙は全て破れています。」
「今、その子はどこに?」
「一旦、寮に戻らせました。」
教員達はしばらく黙った。
「……飛び級は確定として……その子のクラス、どうします?」
「さあ……どうしようか。」
教員達はまた黙ってしまった。
ーその頃ー
僕は自室で、教えられた料理に悪戦苦闘していた。
「野菜って、こんなに硬いんだ……。」
ガツンとヘタを切り落とす。
隣ではフクがバサバサと翼を羽ばたかせ、応援しているように見える。
「はあ……食べられないんだけどね。
料理のテストがあるんだって。
まだ習ってないけど、練習しておかなきゃ。」
また包丁を手に取り、ギリギリと刃を食い込ませた。
「……き……切れない……ん?」
いきなり、フクが手に飛び乗ってきた。
「うわっ!」
フクは包丁を握っている僕の手をしっかりと掴み、包丁ごと上下に揺らすように足をばたつかせ、すぐに手から離れた。
「危ないよ……って、ん?」
野菜を見ると、うっすらと線が入っている。
「もしかして……。」
野菜を水平に置き、包丁を上下に動かした。
あっという間に切れていく。
「凄いよ。よく分かったね。
フクは天才だよ。」
「ホウッ!」
声高らかにフクが鳴いた。
僕は次々と野菜を切り、鍋に入れた。
「確か、サクさんはこうしてたよね。」
調味料を一気に入れ、自作の料理をお皿に盛り付けた。
「フク、どうかな?」
「ギー!!」
フクは不満そうに僕から離れ、壁に体を半分隠した。
じっとこちらを覗き込んでいる。
「どうしたの?」
「ギッ!」
短くフクが鳴く。
よく分からないまま、僕は盛り付けた料理を箸で掴み、口に放り込んだ。
とんでもない量の塩分濃度と、炭のデータが頭に流れ込んできた。
「ガーディさんがくれたお弁当とも、サクさんの手作り料理とも違う。
色も黒いし……おかしいな。何が違うんだろ?」
料理をどんどん口に入れていく。
フクはついに後ろを向いてしまった。
その時、部屋がノックされた。
「ゼロユイ、いるかい?」
先ほどの教員の声だった。
「フク、隠れて。」
フクは寝室へさっと飛び込んだ。
僕は寝室の扉を閉めて、玄関を開けた。
「先生、どうしたの?」
「君のクラスが決まったから、知らせに来たんだ……けど、なんだか部屋が焦げ臭いね。
入っても良いかな?」
教員が部屋に入ってきた。
思わず、フクのいる寝室の扉の前に立つ。
だが、教員は墨と化した野菜炒めに目を止めた。
「これ……君が作ったの?」
小さく頷く。
教員はため息をついた。
「そうか、頑張ったね。
でも、こんなに黒焦げにしてしまうと、体に悪い。
次は一緒に作ろうか。」
顔が急に熱くなるのを感じ、顔を隠した。
教員は僕の肩を軽く叩いたあと、僕に“飛び級証明書”と書かれた用紙を手渡した。
「君は飛び級で、一番上のクラスになった。
仕事の種類や法律、文化について学んでもらうね。
ただ体力や生活については、まだ不十分だから、そこは成長に応じて別のクラスで対応させてもらう。
これは、特例中の特例だよ。
本当に君には驚かされた。」
教員の少し困ったような笑顔に、僕も自然と笑った。




