第1章-16 性別の質問
ー副裁判長/レイ視点ー
裁判長室を出たレイは、事務室のある一階へと降りた。
職員達から頭を下げられ、そのたびに反射的に頭を下げてしまう。
「……やっぱりダメだ。」
深いため息をつきながら、受付の前を通った。
そこには、バッグを背負った小さな子供と、受付スタッフ、そして事務員らしき男の姿があった。
思わず立ち止まる。
「あれ? 従業員しかいない。
誰かの子供が生まれたのかな?」
自然と足がそちらへ向いた。
受付スタッフと男は、全員頭を下げてきた。
子供も頭を下げたスタッフ達を見て、一緒に頭を下げている。
男が前に進み出た。
「レイ様、何かご用でしょうか?
書類のお届けでしたら、俺がお預かりいたします。」
事務員はレイの持つファイルに向けて手を差し出してきた。
だが、首を振り断った。
「ありがとうございます。
ですが、私が届けます。セキ様からの直接の命令ですので。
ところで……。」
子供を見る。
子供は美しい金色の目で、こちらを見ている。
小さな手には申請書が握られていた。
「こんな生まれたての子供、久しぶりに会いました。貴方の子供ですか?」
男は子供の頭に軽く手を乗せて答えた。
「レイ様、この子は保護した子供です。」
「保護……ですか?」
「はい、実は昨日⸻」
男が説明を続けようとした時、子供の口が開いた。
「ねえ、サクさん。
この人は、お姉さん? お兄さん?」
子供のまっすぐな言葉に、一瞬で思考が停止した。
周囲のスタッフ達も固まっている。
サクと呼ばれた男は、慌てて子供の口を塞いだ。
子供は驚いて申請書を落とし、男の手を口から剥がそうとしている。
「レイ様、大変申し訳ございません。
この子には、あとでしっかりと……」
サクが頭を下げた。
思わず苦笑いを浮かべる。
「だ……大丈夫です。
その子の手続きを頼みます。」
それだけ言い、足早にその場を離れた。
深呼吸をする。
「はあ……威厳が欲しい……。」
ぽつりと呟いた。




