第1章-15 予算案
ー裁判長/セキ視点ー
ガイが出て行ったあと、セキの目の前には書類や、届けられた報告書が山のように溜まっていた。
書類1枚1枚に目を通し、次々と処理をしていく。
「こんなものか……。」
あらかた処理をし終え、冷めきった紅茶を飲んだ。
冷たくなったお茶が体を潤していく。
扉から鈴の音が鳴った。
「セキ様、レイです。ただ今戻りました。」
「レイか……入れ。」
レイは扉を開け、深々とお辞儀をしてきた。
まだ若い。
10代後半だが、20代前半にも見える。
女性のような整った顔立ちの青年だ。
とても優秀で、最年少で副裁判長に就任した。
セキはお茶をテーブルの端に置き、腕組みをする。
「レイ、何度も言うが、お前は副裁判長だ。
あまり私に頭を下げる必要はない。」
レイはハッとした顔をして、申し訳なさそうに室内に入り、副裁判長のテーブル席に座った。
「すみません。昔からの癖で……。」
レイの姿に軽く息を吐く。
「早く慣れろ。」
「はい。すみません。」
レイは再び頭を下げた。
「だから頭を下げるなと……。
まあ、良い。それより予算案を見直したい。」
レイはすぐに表情を引き締め、一冊のファイルを棚から引き出し、前に置いた。
セキはファイルを素早くめくると、1枚の書類を引き出した。
「医療や農業に予算を回せ。
足りなければ、採掘現場などからまわしてもいい。
報告では、最近は地盤は安定しているそうだ。
毎年余っている現場だ。
減らしても問題はないだろう。」
レイはセキから受け取った書類を見た。
採掘現場では、毎年3割近くの予算が確かに余っている。
だが、医療現場や農業に配布した予算も1割から2割ほど余っていた。
「お言葉ですが、セキ様。
医療も農業もかなりの予算が毎年余って返却されています。
主治医のコウさんからも減らしても良いと申請がありますし……これは必要予算なのでしょうか。」
「……レイ、報告書を読んでいないのか。
今年は特例だ。雨が極端に少ない。」
レイは姿勢を正した。
「たいへん失礼いたしました。すぐに手配いたします。」
レイはファイルを持ち、裁判長室を後にした。




