噂に尾鰭背鰭がつくのは当たり前と考えるべき②
南雲さんと西宮さんに、俺と東海林さんが触手友達略して触友であることがバレてしまったため、どうして触友に至ったのかを事細かに説明した俺。
「北山くん、もう一つ聞きたいことがあるのだけど……今日、東海林さんの様子はどうだった? 顔色が少し悪いとか、他のこと気にしてるようだったとか、普段と違う様子って見られたかしら?」
「いえ、これといって普段と違う様子は見られなかったと思います。いつも通りに、楽しそうに話していたと思います」
「そう。なら、東海林さんはこの噂を知らない可能性が高いわね」
「まぁ知ってたらしばらく俺と距離置くと思いますしね……。というかそもそも、どうしてそんな噂が流れて始めたんですか……? 付き合っているならまだわからなくもないんですが……なんでそんな色々ぶっ飛ばして、そんなことに……?」
「それは噂収集家の西宮奏多さんにお聞きください。はい、どうぞ」
「え……? あ、は、はい……。あ、あの、えっと……あんたと東海林さんがその、お昼に第三校舎から出てくるところ見たって子がちらほらといるらしくて……。それで、その……と、東海林さんはスッキリしたような晴々しい表情で、あんたはなんというかやりきったというかそんな表情してたそうなので……結果、そういう噂が広まったといいますか……」
「まぁそんな表情で人気のないところから出て来てたら、そんな噂が広まるのも無理ないわね。東海林さんが攻めで、北山くんが受けだということもね」
「待ってください! そ、そんな恥ずかしい噂まで流れているんですか……⁉︎」
「らしいわよ。私が直接聞いたわけじゃないから本当かどうかわからないけど。『東海林さんは、あのお姿でガンガン攻めるだなんて……! ギャップを感じてたまりませんっ! 俺も攻めてほしい!』って男子が多発しているそうよ。もちろん北山くんには……言わずとも伝わるわよね?」
「南雲さん、そんな情報は欲してないです……」
そういや最近は慣れてきたというか、周囲の警戒を怠ってたからなぁ……。
こうなるのも時間の問題だったってわけか……。
「ってかはるはる、あんたこれ以外にも付き合ってる疑惑の噂あるけど、大丈夫なの?」
「え……? 他にも……?」
「うん。まぁあんたとづっきーは普段から一緒にいるし話もしてるしで、そんな噂が出てて当然っちゃ当然だろうけど。他校の高身長激カワギャルと駅前で腕組んで一緒に帰ってたとかさ。『羨ましい』だとか『不幸になれっ!』とか、あんた男子から陰で結構色々言われてるわよ」
「まさか東海林さん以外にも、そんな……! あ、あの、誤解のないように言っておきますが、駅前のやつは、俺の妹だと思われます……。なんで、もちろんのこと他校の高身長激カワギャルと付き合ってるなんてありませんから……」
「そういや、あんたの妹身長めちゃ高いって言ってたっけ」
「ちなみに北山くん、妹ちゃんの写真は持ってないのかしら? 私、気になるんだけど」
「一緒に写真撮ったら俺に送ってくる子なんで、ありますよ」
俺はスマホを取り出し、妹と一緒に写ってる画像を表示して二人に差し出す。
西宮さんは、絵に描いたように目を丸くしている。
「……え? う、嘘でしょ……?」
「北山くん、妹ちゃん、今いくつなの……?」
「今年で十四です。まだ誕生日来てないんで十三です」
「じゅ、十三歳でこの見た目はエグすぎるって……! もう大人じゃん……! 私よりも大人びてるし、めちゃ可愛いし……! これで身長も七十七もあるんでしょ……! 私のなりたい憧れ像、まさにこれなんですけど……!」
「え、待って? この子私よりも身長高いの? 私も女子の中ではそれなりに高い方なんだけど、そんな私よりも高いの? そりゃこの見た目でその身長で腕組んで歩いてたら、妹じゃなくてカップルだと思われるわよ北山くん……」
「す、すみません、以後気をつけます……。というか、南雲さんもその、すみません……。俺と話したりしてるせいで、噂されてるみたいで……」
「その件に関しては気にしなくていいわよ。そういった噂は出ること承知であなたと話してたわけだし。それよりも、今は私より東海林さんよ。あなた、これからどうするつもりなの?」
「ど、どうすると言われましても……ど、どうしたらいいですか……?」
「そうね……。結局は噂なんだし、あなたたち二人が気にしないのであればそのまま放っておくってのも、一つの方法だとは思うけど……」
「俺としては、できることなら消し去りたいです……。内容も内容なので……」
「まぁそうよね。付き合ってるくらいならまだ可愛いけど、さすがにあれは……うん」
噂の内容を思い出し、三人頬を赤らめて「んんっ……!」と咳払い。
改めて思うが、いくら年頃だからといって、さすがにぶっ飛びすぎだろ……。
「あ、あのさ、そもそもまず、東海林さんはどうするの? はるはるの話聞く限りじゃ、多分気づいてないんでしょ? 気づいてないのなら、今後もはるはると昼休みに話したりを続けるつもりだろうし……」
「仮に知らせずに北山くんにも気づいてないふりを続けてもらうってことにしても、噂がある以上は今後面白がって後をつけるなんてことする人が出てくるかもしれないしね。このまま放置はよくないと思うわ」
「そ、そもそもまず、俺に気づかないふりを続けろが多分無理です……。途中で絶対にバレるかと……」
情けない言葉を吐き出して、南雲さんを見つめる。
南雲さんは右手を顎につけ、しばらく長考。
「……私は、東海林さんにもこのことを伝えて、どうしたいか本人に聞くべきだと思うわ。私たちが伝えなかったとしても、噂なんていつか本人にも届くものだろうしね。遅かれ早かれの話になると思う。あと、今のままだと北山くんの負担も大きそうだし……」
「そ、そうだね……。私は、づっきーの意見に賛成かな? それに、あんたたち話してる内容も内容だし……このまま放っておいて後でバレた時の方が、傷深くなりそうっていうか……」
「北山くんは? どうしたい?」
「そう、ですね……。俺も、南雲さんの言うように、俺たちが伝えなくても、遅かれ早かれ東海林さんの耳にも届くと思います。それに、西宮の言うこともその通りと言いますか……。とにかく俺も、東海林さんに噂のことは伝えて、今後どうしていくのか東海林さん交えて話し合った方が、いいかなと思います……!」
「それじゃあ、『東海林さんに伝える』で決まりね。これから彼女にどう伝えるのか、どういった対応をするのか、話し合いましょう」
「は、はい!」「う、うん!」




