失敗の存在感は成功の三倍くらいデカい
ピピピピッ。ピピピピッ。
放課後の部室にタイマーの音、そして「はい、しゅ〜りょ〜」という南雲さんの声が響き、俺たち部員三人は「ありがとうございました」と互いに頭を下げあったのち、俺は頭を上げることなく頭を抱えた。
「はるはるどうしたの? 今日のフリトダメダメじゃん」
「す、すみません……。まさか自分でもここまで酷くなるとは思ってもなくて……」
「もしかして体調悪いの?」
「いえ、そういうわけでは……」
自身の失態に苦笑いを浮かべながら顔を上げる。西宮さんは「大丈夫そうならいいけど」と俺に伝えたのち、椅子を引いて南雲さんの隣に移動。再度腰下ろして南雲さんの肩に頭を寄せた。
南西コンビの尊い現場を目撃したにも関わらず、俺の心は晴れない。
脳内にはお昼に見た触手が未だに住み着いており、目の前の可愛い子ちゃんに今すぐにでも襲いかからんという勢いでうねうね身を動かし続けている。
それを止めるのに必死で、フリートークどころではなかった。洒落にならんぞ、二人を触手に絡めるなんて。それは絶対に許されないし、そもそも俺が耐えられるわけがない。鼻血出す、絶対に。
「北山くん、どうしてあなたが急に調子落としたのか……西の高校生探偵と呼ばれとる俺が当てたるわ」
ポケットに手を突っ込む仕草を見せながら立ち上がる南雲さん。
彼女の勘は鋭いことで有名なので、前回同様バシッと当てられそうで怖い。頼むからやめてくれ。触手の件はそっとしておいてくれ。
「あんたがなんで調子落としとるか……それは、『最近昼間によぉ喋っとる女の子と、うまいこといってへん』からやぁぁぁ!」
「……いや、あの、別にそういうわけでは……」
「なんやてぇ⁉︎ ほんまかいな、工藤⁉︎」
「北山です。その、あの……まぁ今日も話せてたと言えば話せてましたし。それにLINEも交換したので、別に上手くいってないとか、そういうわけでは」
「へぇ〜。ねぇ聞きました、かなたん先生? 北山くんったら、LINE交換したんですって。なんか順調に仲を深めあっていらっしゃるそうですよ。どうします? このまま北山くんと謎女子がお付き合いとかしちゃったら?」
「はるはるが私より先に恋人ゲットとか、なんか嫌! 悔しい! ってことで、ダメです!」
「心配しなくてもそんな関係にはなりませんよ……。相手はあの東海林さんですよ? 俺が好きになることはあっても、東海林さんが俺をなんてことは、余程のことがないと考えられませんよ」
それにあの方は今、触手にお熱だからな。恋人よりも触手を選ぶ姿が容易に想像できる。
脳内に現れ、触手について熱く語り始める東海林さん。あまりの熱さに俺は苦笑いを一つ浮かべて会話から離脱。現実へと帰還した。
「へぇ〜……!」
「ほぉ〜ん……!」
現実世界の美女二人は、ニヤニヤニタニタ、触手を描いている時の東海林さんと同じような笑みを浮かべている。
俺、なんか笑われるようなこと言ったっけ?
脳内で自分の発言を巻き戻し……すぐさま原因を発見。俺は身体を硬直させた。
「ねぇねぇ聞きました、づっきー先生? はるはるってば、あの東海林さんと一緒にお食事していらっしゃるそうですよぉ〜」
「そりゃあんな可愛い子と二人きりでお昼食べてたら、嬉しくてテンション上がっちゃいますわ。調子よくなっちゃいますわ。んで、今回はついにLINE交換。あまりの嬉しさにそのことしか考えられなくなって、逆に調子落としちゃいますわねぇ〜」
「はるはるってば、隅に置けませんねぇ〜」
「私たち以外の美女ともお近づきになっちゃって〜! 周囲の男子にとやかくやんやん言われても文句の一つも言えませんよぉ〜!」
ニタニタニヤニヤ、笑みを一層強めて俺を見つめる美女二人。
まさかこんな凡ミスでバラしてしまうなんて……。
東海林さんに、なんと説明しよう……?




