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『百二十一人目』 ~魔力を持って生まれた子〜  作者: 音


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全員が嘘をついている

一日目に、耳へ手をやった回数は、四十一だった。

数えたのは、癖だからだった。癖でなくても、数えたと思う。

四十一という数が出たときに、少し手が止まった。

トルヴェクの鳴っている坑の数と、同じだった。

関わりはない。関わりのない数が同じになることは、いくらでもある。北の谷の柱は十九本で、トルヴェクの道から見えた塞がった坑も十九だった。あれも、ただの偶然だった。

偶然だと分かっているのに、頭のほうが勝手に並べた。

並べたものを、わたしは脇へ寄せた。寄せておかないと、そのうち意味があるように見えてくる。

夜、宿の土間で、わたしはその数を言った。

「四十一回でした」

オルサは、椀を持ったまま止まった。

「数えたか」

「数えました」

「なぜ数えた」

「数えるしか、できることがなかったからです」

彼女は、そのことに何も言わなかった。三日目の晩に同じことを言ったときも、同じだった。

この人は、答えの要らないものに返事をしない。

三年半で会った者のうち、そういう人は何人かいた。グリムも、ヘズも、ヘルヴィもそうだった。返事をしないというのは、聞いていないのとは違った。

聞いて、返事が要らないと決めている。

決めているのを、こちらが分かるように黙る。

「四十一のうち、いくつが本当ですか」

「本当かどうかは、分からんと言ったろう」

「じゃあ、いくつが嘘ですか」

「四十一だ」

わたしは、その返事を受け取った。

返事が速かった。

数えていないと言った者が、多くはないと即答したときと、同じだった。この人は、数えていない顔をして数えている。

たぶん、数えないでいられないのだと思った。

わたしも、そうだった。

「全部ですか」

「全部だった」

彼女は、椀を置いた。

「初日は、たいてい全部だ」と彼女は言った。「初日に本当のことを言う者は、おらん。初日は、こちらがどこまで知っておるかを測るためにある」

「じゃあ、二日目からは」

「減る」

「減ると、どうなるんですか」

「減ったところが、本気で欲しいものだ」

「本気で欲しいものは、本当のことを言うんですか」

「言わん」と彼女は言った。「本当のことを言わんが、嘘もつかん」

「どうやるんですか」

「言わんのだ」

彼女は、椀のふちを指でなぞった。

「本気で欲しいものについては、みんな黙る。黙っておるところが、いちばん重い」

わたしは、その言い方を頭に入れた。

書いた紙の中から、誰が何を言わなかったかを探すのは難しかった。書いてあるのは、言ったことだけだった。

わたしは、板に挟んだ紙を出した。その日書いたものを、端から読み返した。

長かった。天幕に入ってから出るまでを全部書いたので、読み返すのに一刻かかった。

読みながら、耳に手をやった箇所へ印をつけた。

つけ終わって、並べた。

四十一のうち、二十六がロヴァニスの卓から出ていた。

残りの十五を、卓ごとに分けた。

アルディエルが四つ。トルヴェクが三つ。テルノスが三つ。ザルハーンが二つ。ヴェルガルドが一つ。残りの二つは、どの卓から出たかを書き落としていた。

書き落としたのは、そのとき水を飲んでいたからだった。

わたしは、その二つに印をつけた。分からないものを分かったことにして並べるのが、いちばんまずい。老人がそれらしい数を挟んだときと、同じことになる。

「多いですね」

「あそこは、いちばん喋る」と彼女は言った。「喋る者は、嘘も多くなる。喋らん者は、嘘も少ない。だからといって、正直とは限らん」

「喋らないのは、どこですか」

「北だ」

わたしは、ヴェルガルドの卓のことを思い出した。三人座っていて、そのうち一人しか喋らなかった。喋る者も、短かった。

「北は、何を言いに来たんですか」

「麦だ」

「麦ですか」

「麦しかない」と彼女は言った。「あそこは、食い物を全部よそから買っとる。条約が切れて、ロヴァニスが麦を止めたら、その日で終わる。だから、麦の話をしに来た」

わたしは、それを書いた。書きながら、思い出していた。

北五峡の谷。掘ってあるところの入り口に、去年の落ち葉が積もっていた。若い者は籍を作って南三峡へ出ていった。残っているのは、出られない者だけだった。

あそこは、条約が切れる前から終わっていた。

峡の名を、わたしは一度も口に出さなかった。

北五峡が持ち出されることは、この七日で一度もなかった。誰も、あそこの話をしなかった。

条約は、国と国のあいだのものだった。国の中でどこが飢えているかは、条約の外にある。

外にあるものは、記録にも載らない。

「オルサさん」

「なんだ」

「エオリンの席は、ずっと空いてました」

「空いておった」

「誰も、そのことを言いませんでした」

「言わんだろうな」

「なんでですか」

彼女は、少し間を置いた。

「言えば、埋めねばならんからだった」

「埋めるって、代表を連れてくるんですか」

「連れてくるか、誰かがあの土地を取るかだ」と彼女は言った。「取った国が、あの席に座る」

わたしは、そこで手が冷たくなった。

空いた席は、埋まらないままにされているのではなかった。

埋める者が決まるまで、空けてあるのだった。

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