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『百二十一人目』 ~魔力を持って生まれた子〜  作者: 音


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春の島

島の土は、薄かった。

薄いというのは、掘ると石が出るということだった。畑と呼ばれているところで、わたしは何度か手伝わされた。鋤を入れると、腕の長さの半分も行かないうちに何かに当たる。当たったところを避けて、また入れる。避けながら耕すので、畝がまっすぐにならない。

島の者は、それを当たり前のこととして耕していた。まっすぐでない畝をまっすぐにしようとする者はいなかった。

わたしの生まれた土地では、畝はまっすぐだった。父が売りに行く途中の畑を、荷車の上から見たことがある。地平の際まで、線が揃っていた。

揃っているのは、石が出ないからだった。それだけの違いだった。

その畑が、島じゅうを合わせても、人の五分の一しか食わせられないのだと老人が言った。

「残りは」

「奪う。買う。傭う」

同じ答えを、わたしは船の上でも聞いていた。船の上で聞いたときは、それが説明に聞こえた。畑に立って聞くと、説明ではなかった。目の前の石だらけの土が、そう言っていた。

冬が明けてから、わたしたちは岸の囲いを出された。

出されて、それぞれに別の仕事がついた。背の高い女は塩に回された。魚を開いて、塩を振って、並べる。手が荒れる仕事で、彼女の手は十日で割れた。割れても代わりはいなかった。

代わりがいないというのは、休めないということだった。彼女は割れた手のまま塩を扱った。塩が傷に入るとどうなるかは、見ていれば分かった。

夜、囲いの中で、彼女は自分の手を毛皮の下に入れていた。見せないためだった。見せて、動かせないと思われたら、次の遠征で先に下ろされる。

一度も喋らない人だった。喋らないまま、そういうことを全部計算していた。

小さい男の子は、綱をなう場所へやられた。座ってできる仕事だからだった。

わたしは、船の修繕へ回された。

理由は、指が細いからだった。板と板のあいだへ詰め物を押し込む作業に、細い指が要る。灰縁の村で篩の目を直していたのと、ほとんど同じ理由だった。どこへ行っても、わたしは同じ理由で使われた。

船の底を見て、初めて分かったことがあった。

浅いのは、そう作ってあるからではなかった。作れる木がないからだった。

島には、長い木がなかった。船の骨に使える太くて長い材が採れない。だから短い材を継いで、継いだところを薄くして、全体を低く浅くする。そうしないと重くて保たない。

「木は、どこから来るんですか」

「北からだ」

「買うんですか」

「買う」と、修繕を仕切っている男が言った。この男もこちらの言葉を話した。買い付けに出る者は言葉を覚えるらしかった。「北の峡から買う。買った木で船を作って、その船で北の峡を襲う」

彼はそれを、面白い話をするように言った。

「向こうは売るんですか」

「売る。銭になるからな」

「襲われるのに」

「襲われる峡と、売る峡が違う」と男は言った。「南三峡は売る。北五峡は襲われる。同じ国の中でだ」

「南三峡の人は、それでいいんですか」

「よくはないだろうな」と男は言った。「だが、売らんかったら、うちが南三峡を襲う」

「売れば、襲われないんですか」

「売る相手は襲わん」と彼は言った。「襲えば、次の年に売ってもらえん。木がなければ船が作れん。船がなければ、どこへも行けん」

わたしは、その理屈を並べ直した。

売る峡は守られる。売るものがない峡は守られない。北五峡には売るものがなかった。だから襲われる。

わたしは、その話をしばらく考えていた。

夏になると盟約会がある、と老人が言った。

全島の代表が集まって、二月かけて話す。話す資格は、票を持っている者にしかない。票は前の年の戦功で決まる。遠征を率いて分け前を持ち帰れば五つ、出て帰れば二つ、出なければ零。

「出なかった者は、何もできないんですか」

「喋れん」

「聞いてるだけですか」

「聞いておってもいいが、たいてい来ん」と老人は言った。「来ても座るところがない」

「決めるのは、出た人だけなんですね」

「そうだ」

「出られない人は」

「おらん」と老人は言った。「出られん者は、出られんまま年を取る。年を取った者は、票のあるうちに何も決めなかった者だ」

「じゃあ、決めてるのは若い人ばかりですか」

「そうだ」

「若い人は、去年のことを覚えてますか」

老人は、そこで少し黙った。

「わしが覚えとる」と彼は言った。

わたしは、北五峡の分け方の集まりを思い出していた。あそこでは全員が自分の口で数を言った。言った数が柱に刻まれた。声の大きい者の数が通るのではなく、去年その数で足りたかどうかを覚えている者の言うことが通った。

覚えている者が強い土地と、出た者が強い土地。

「盟約会では、何を話すんですか」

「その年の分け前と、次の年にどこを襲うかだ」と老人は言った。「それと、南の話」

「南の」

「条約がある」と彼は言った。「南の十の国が、五十年前に結んだやつだ。互いに攻めんという約束でな。あと三年で切れる」

「切れたら、どうなるんですか」

「向こうが互いに殴り合う」

「じゃあ、いいことなんじゃないですか」

老人は、そこで笑わなかった。

「うちは、その約束に入っておらん」と彼は言った。「入っておらんから、うちだけは五十年ずっと殴ってよかった。切れれば、みんなが殴ってよくなる」

彼は自分の動かない脚を叩いた。

「みんなが殴れる世の中で、いちばん小さい島がどうなるかは、盟約会でみんなが考えとる」

「三年しかないんですね」

「三年だ」

「三年で、なにか変えられるんですか」

「変えるという言い方をする者はおらん」と老人は言った。「あるのは、三年で何をするかという話だけだ」

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