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『百二十一人目』 ~魔力を持って生まれた子〜  作者: 音


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数えられるように

四日目の朝、シグリが船尾へ来た。

わたしのところへまっすぐ来た。老人が何か言い、彼女が短く返した。それから彼女は、わたしの前にしゃがんだ。

近くで見ると、思っていたより若かった。

二十を少し過ぎたくらいに見えた。それでいて、この船で誰よりも上だった。年上の男たちが、彼女が通ると場所を空けた。

年で決まらない土地だった。年で決まらないというのは、決めるものが別にあるということで、それが何かは腕を見れば分かった。

腕の白いところが、日の下でよく見えた。白いのは色が抜けているのではなかった。表面が変わっていた。爪で弾いたら音が鳴りそうな、そういう変わり方をしていた。

彼女は、わたしの腕をとった。

袖をまくって、内側の線を見た。指で撫でた。

それから、老人に何か言った。

「隠すやつだな、と言っている」と老人が訳した。

わたしは黙っていた。

「もう一つあるだろう、とも言っている」

「なんで分かるんですか」

老人が伝えると、シグリはわたしの右腕のほうを顎で示した。まくってもいないのに、そちらだと分かっていた。

「片方だけ袖を気にしておる、と言っておる」と老人は言った。「あんた、さっきから右の袖ばかり直しておるだろう」

わたしは手を止めた。彫ったばかりのほうを、無意識に庇っていた。

「見る者は、そこを見る」と老人は言った。「あれは、そればかり見て九年生きておる」

老人がそれを伝えると、シグリは自分の左腕を上げた。

指で、一つずつ線を叩いた。

叩きながら、何か言った。

「一つ目は、初めての遠征だ」と老人が訳した。「二つ目は、その次。三つ目は、船を任された年。四つ目は、四十人を連れて帰った年。五つ目は、負けた年。六つ目は、その次に勝った年」

「じゃあ、去年は」

老人が伝えると、シグリは何も言わなかった。

「去年は出た。帰った。持ち帰りもした」と老人が言った。「だが刻んでおらん」

「なんでですか」

「七つ目だからだ」

わたしはシグリを見た。彼女はこちらを見ていなかった。

「刻印って、そういうものなんですか」

「うちではそうだ」

「でも、術じゃないんですか」

老人が伝えると、シグリは笑った。声を出して笑った。

彼女は五つ目を指した。指して、何か言った。

「これは何もしない、と言っている」と老人は言った。

「何も」

「負けた年に刻んだものだ。負けた年に持ち帰るものはない。持ち帰るものがないから、数えられるものもない。それでも、その年に出たことは残さねばならん」

「残さないと、どうなるんですか」

「出なかったことになる」

「でも、出たのに」

「出たかどうかは、腕を見て決める」と老人は言った。「盟約会で票を数えるときに腕を見る。書いたものは信用されん。書いたものは書き換えられるからな」

わたしは、その理屈を追った。

書き換えられないものだけを信用する。だから体に刻む。体に刻めば、書き換えられない代わりに、消せもしない。

消せないものを増やすと、体が減る。

減るのを承知で刻む。刻まないと、出たことにならない。

「だから刻んだんですか」

「刻んだ」

わたしは、その線を見ていた。ほかの線と同じ形をしていた。同じように白く、同じように盛り上がっていた。

「何もしない刻印なのに、体は減るんですか」

老人が伝えた。

シグリは、笑わなかった。

彼女は自分の首の付け根の線に触れた。触れると、そこの皮膚は動かなかった。指が沈まないで、表面を滑った。触れて、こちらの言葉ではない言葉で、少し長く喋った。

老人は、しばらく訳さなかった。

「なんて言ったんですか」

「減る、と言った」と彼は言った。「減るから数えられる、とも言った」

「意味が分かりません」

「減らんものは、数える値打ちがない、と」

わたしは、記録小屋の柱のことを言いたくなった。

あれは減らない。彫った刻みは残る。残っているから、何年前にどれだけ取ったかが分かる。減らないから数えられる。

この人の言っていることと、逆だった。

逆なのに、どちらも数えていた。

シグリは立ち上がった。立ち上がって、船の中を見回した。漕いでいる者たちのほうを見ていた。

彼女はまた何か言った。今度は長かった。

老人は、それを短く訳した。

「三十五で石になる。四十を過ぎた戦士はいない。だから、盟約会に出るのはみんな若い。若い者が決める」

「年寄りは」

「おらん」

老人は自分の脚を叩いた。動かないほうの脚だった。

「わしみたいなのが残る。戦えなかった者だけが年を取る」

彼はそれを、恨みのない言い方で言った。

「シグリは、それを恥だとは思っておらん」と彼は言った。「あれは、老いた者を憐れんでもおらん。年を取れた者は取れた者、取れなかった者は取れなかった者だ。それだけだと思っておる」

シグリは、まだ漕ぎ手のほうを見ていた。

わたしは、自分の腕の内側に手を当てた。

二つ。あと二つ。

数えるたびに、減るものを数えていた。減るから数えていた。

シグリの言ったことが、そのとき、わたしには少しだけ分かった。分かったことが嫌だった。

シグリがまた何か言った。老人は少し迷ってから訳した。

「あんたの腕は何を数えとるのか、と訊いておる」

わたしは答えられなかった。

答えは持っていた。四つのうち二つ使った、という答えだ。けれど、それを言えばこの人は残りが二つだと知る。残りを知られた者がどう扱われるかは、この船の上を見ていれば分かった。

「まだ数えていません」とわたしは言った。

老人は伝えた。

シグリは、それを聞いて、初めてわたしの顔をまっすぐ見た。

「嘘だな、と言っている」

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