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婚期逃したので侍女として働いています。え⁉︎ 地味な私が歳下の公爵令息に溺愛されるんですか⁉︎  作者: 水月華


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27.突然の休暇

 お茶会はその後、クレメンスが話題を変えてくれて居心地の悪さが少し紛れた。


 部屋に戻り、ベッドに倒れ込む。


 ステファニー様は、どうしてあんなことを言ったのだろう。


 私が本気にとらないと分かっての発言なのだろうけれど、正直質が悪いと思ってしまう。


 どう反応しても、私に悪い風が吹く状況だった。


(もしかしてエドワード様が私に絡んでいるから、牽制目的だったのかな。それなら辻褄があう……でもわざわざクレメンスの前で言う必要はないと思うし)


 むしろクレメンスが怒る可能性もあった。これは自惚れではなく、事実だ。


 家柄ではフォーサイス公爵家とヒューイット侯爵家で大きな差があるけれど、影響力で言えばヒューイット侯爵家と距離を取るのは得策ではない。


 どんな意図でステファニー様があの様な発言をしたのか、私には理解出来なかった。


 最近、公爵家の人達との距離がわからなくなっていた。


 特にお二人の行動は、冗談なのかよく分からないのが悩むところだ。


 例えば私を追い出したいというのであれば、もっと単純に動けばいい。たかが一介の侍女など、ステファニー様の一存で解雇するなど容易いことだ。


 ただの嫌がらせというのも、しっくり来ない。


 フォーサイス公爵家の方々が、そんなことをするような人達とは思えない。


 いくら人間裏の顔があるといえど、全員が嗜虐性を持つわけでもないのだ。


「はあ。考えても答えは出ないよね。もう寝よ」


 けれど悩みを抱えている状態ですぐ寝れるはずもなく。


 布団の中で何度も寝返りを打つ羽目になったのだった。



 ◇◇◇



 数日後、遂に大きな大きな嵐がやってきた。


 そういえばお父様へ送った手紙の返事がきていないなぁ。なんて考えていた時だ。


 マティルダさんからまた呼びだしを受けた。


 最近の傾向を考えるに、あまり私にとって良いことではない。


 そう考えていたことは見事に的中した。


「ジェイン、貴女に休暇を出します」

「……え?」


 マティルダさんの言葉に、頭が真っ白になる。

 

「ただの休暇よ。解雇とかは絶対にないから安心してちょうだい」

「ではなぜ……」


 衝撃は抜けない。力強く言うマティルダさんとは反対に、私は呆然とした声を出さずにはいられなかった。


 更に第三者の声が割って入る。

 

「以前話しただろう。アトウッド伯爵領に行きたいと。伯爵からも是非にと言われてな」

「え?」


 私を更に混乱に陥れる言葉を吐いたのは、エドワード様そのひとだった。本当に最近、この人のお陰で衝撃的なできことを何度も味わっている。


 それより、状況が全く理解できない。


「えっと、本当に父がそう言ったのですか?」


 お父様から返事が来ないので、エドワード様の言葉が真実かは分からない。


 けれどまだエドワード様を招けるほどの状態ではないはず。


「ああ。手紙でのやり取りだけだが、問題ないと書いてあったぞ」


 きっとそれは強がりだろう。


 公爵家の嫡男がきたいと言えば、伯爵家としては無理難題でも応えねばならない。


 もしかして最近返事が遅いと思っていたのは、必死にエドワード様をおもてなしする準備をしているということではないだろうか。


 色々な憶測が頭をかすめるが、私が行く必要はあるのだろうか。


「父がそういうのでしたら、問題ないでしょう。それで、あの、どうして私も休暇を?」

「アトウッド伯爵家に行くのならば、ジェインも一緒に帰省すればいいだろう? ジェインが行かないのもおかしな話ではないか?」

「そうかもしれませんが、私は現在家業に携わっておりません。お役に立てるかというと疑問でございます」


 それに急な休暇で、皆にも迷惑がかかるかもしれない。


 慢性的な人手不足ではないけれど、突然一人抜ければその分、他の人に負担がいくのは当然だ。


「家業だけではないだろう。案内してくれるととても助かるんだが」

「ジェイン、こちらのことは気にしなくていいわ。私が調整するから、大丈夫よ」


 マティルダさんは、私の考えていることを見抜いたらしい。


 ここまで言われたら、私のできることは一つしかない。


「わかりました。よろしくお願いいたします」

「ああ」

「それでいつ出発されるのでしょうか?」

「明日だ」

「明日……わかりました。申し訳ありません。私は準備をしますので、これで失礼します」

「ああ」

「せっかくだから、ゆっくりしてきて」


 マティルダさんは優しく声をかけてくれたけれど、ゆっくりできないです、と内心答える。


 エドワード様がいるだけで気を張るのは間違いないし、明日出発なら急いで準備をしないと。


 急いで部屋に戻って、帰省の準備を始める。


 できればもう少し、早く話してほしかったなと思った。


「お父様達もきっとてんやわんやでしょうね……。帰ったらすぐに手伝おう。エドワード様は多分、お父様とお兄様だお相手してくれるわ」


 その間にお母様の手伝いをして、少しでも役に立たないと。


 そういえば、どのくらいアトウッド伯爵領にいるつもりなのだろう。


 普通なら移動は含めず1週間くらいか。とはいえ、視察という名目になるのなら、もう少し短いかもしれない。


 長いな。といつもは思わないことを思ってしまう。


 それにしても社交辞令だと思っていたのに、まさかお父様に直接コンタクトをとってまで行こうとするなんて。


 アトウッド伯爵家の窮状を知っていて、行こうとするのは何か意図を感じざるを得ない。


 気になることは多かったけれど、時間もないので考えるのを止めて、荷造りに集中することにするのだった。

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