表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚期逃したので侍女として働いています。え⁉︎ 地味な私が歳下の公爵令息に溺愛されるんですか⁉︎  作者: 水月華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/43

12.意図が読めない

 エドワード様と不思議な邂逅があったけれど、誰に言うこともなく、さして気にしていなかった。


 きっとたまたまだろう。


 後継者教育や婚約者探しを、四六時中しているわけでもないだろう。ましてや、エドワード様は学園を卒業したばかりだ。そのことを加味すれば、息抜きの合間にたまたま私がそこにいただけだろう。


 そう考えるとむしろ、せっかくの息抜きに邪魔をしてしまって申し訳なかったなと思う。


 今後はマティルダさんあたりに、侍女が誰もいない時間を確認して欲しいものだ。


「ジェイン。今日は何の仕事をしているんだ?」

「……」


 呑気なことを考えていた数分前の自分に言いたい。その考えは違うと。


 後ろから話しかけられて、錆のついたブリキ人形のようにぎこちなく振り返る。


 そこにはエドワード様が、壁にもたれるようにして立っていた。


 普通に考えればだらしない体勢のはずなのに、様になりすぎている。


 むしろ気だるげな様子が、とんでもない色気を放っている。この人、本当に私より年下でしょうか?


「……私の仕事はひと段落したので、今は他の者の手伝いをしているところです」

「熱心だな」

「私は侍女ですので、フォーサイス公爵家のために働いているだけでございます」


 3回も個別に声を掛けられれば、偶然というのは厳しい。何かしら私に用事があると考えてよさそうだ。


 とはいえ、下っ端侍女に用があるなんて、あまりいい意味な気はしない。


「それで何か、ご用命でしょうか?」


 聞きたくない気持ちもあるけれど、聞かないことには先に進まない。嫌なことはさっさと済ませてしまおう。


 そんな風に考えて発した私の言葉に、エドワード様は虚を突かれたような顔をする。


「……用、か」

「はい。この間から私に用があって、話しかけにきていたのではないのですか?」


 私の予想に反して、エドワード様は考え込むように顎に手を当てている。


 あれ、もしかして本当に偶然?


 少し不安になっていると、エドワード様はくすりと笑う。


「そうだな。少し話し相手になってくれないだろうか」

「……へ⁉︎」


 今度は私が虚を突かれる番だった。

 

 なんですかその、さも今思いつきましたと言わんばかりの顔は。


 さっきまでの色気とは違う、どこか幼さを感じるその表情にドキリと心臓が跳ねる。

 

「知っての通り、俺は学園を卒業したばかりでね。屋敷の管理も追々覚えていく必要がある。父上の指導でも学べることはとても多いけれど、実際働いている者のことをその目線で知りたいんだ」

「……」


 本当にこのお方は器が違う。ここまで使用人に寄り添ってくれるのであれば、使用人達のフォーサイス公爵家への忠誠心は高くなる一方だろう。


 あまり思い出したくもないが、縁談が進みそうだった時に相手の屋敷に訪れた際は、使用人を道具として扱っていたように思う。


 それに対してジェインの家族は、使用人を道具のように扱っていたとかそういったことはなかった。


 何かイベントに応じて報奨を与えていたし、使用人たちも皆笑顔で働いていた。


 それらを思い返すと、ここほどではなかったかもしれないけれど、アトウッド伯爵家も良い職場であれたのではないだろうか。


 もしかしたら、私の過大評価かもしれないけれど。

 

「ジェイン?」

「はっ。申し訳ありません」

「いや、具合が悪いのか?」

「問題ありません。あまりにもエドワード様が謙虚だったので驚いてしまったのです」

「そうか? まあ、父上には常々言われているからな。『今の我々が公爵家でいられるのは先祖のお陰で、これから我々が行動で返していくのだ』と」

「そうなのですね。ですが、私達は旦那様のお陰で不自由ない生活を送れています。とても感謝しています」

「それで?」

「?」


 急にエドワード様から問われ、思わず首を傾げてしまう。


 悪戯っ子のような笑みを浮かべて、エドワード様は言った。


「俺に色々教えてくれないか?」


 そうだ。さっきそう聞かれていたんだった。


「……私より適任者はいると思うのですが」


 まだ私は2年ほどしか働いていない。もっと長く働いている、ヴァイオレットなどが適任だと思うのだけれど。


 小さな声で言うと、エドワード様は少し考え込んでから言った。


「そうか。ジェインは俺と話すのが嫌か?」

「い、いえ! そういうわけではなく!」

「じゃあ良いな。よし、行こう」

「え? え?」


 失言したと顔を青くする私に、エドワード様は強引に、けれど優しく腕を引く。


 混乱しつつも流されるようについていこうとして――はたと気が付く。


「え、エドワード様! まだ仕事中ですので、えっと、あとで時間を作ります!」

「大丈夫だ。マティルダには許可を取っている」

「へ⁉︎」

「1時間くらいなら良いと、許可を取っておいた。あちらに準備もしてある」


 それは本当か⁉︎ いや、エドワード様はそんな嘘を吐かないだろう。


 だとしたら最初からそのつもりで? というか私? 何故だ。


 混乱する私を、どこか楽しそうに連れていくエドワード様。


 これで怒られるの、私なんだろうなぁ。


 エドワード様を疑うわけではないけれど、大体しわ寄せはこちらにくるのは下っ端の定めだ。


 マティルダさんも、やたらめったらに怒る人ではないけれど、小言はあるかもしれない。


 まあ、何とかなるか。何せ、エドワード様がとても楽しそうなのだ。水を差すのも、なんか申し訳ないし。


 諦めて受け入れた私は、手を引かれるままエドワード様について行くのだった。


 

 ◇◇◇

 


 連れて行かれたところは、そう遠くないけれど人気がないところだった。


 東屋があって、そこに茶器とスイーツが置かれている。


 既にそこには誰もいなかったけれど、明らかにエドワード様のために用意されたものだった。


 エドワード様は慣れた様子で、私を椅子に座らせる。


 流石、エスコートが完璧だ。侍女にしているという、違和感はさておいて。


 エドワード様も向かいに座る。


 ここで、ティーポットはあってもカップの中が空なことに気がつく。


 ティーポットには中身が用意されているらしく、エドワード様が持ち上げてカップに中身を注ごうとしていた。


「お待ちください。エドワード様に、そのようなことはさせられません」

「じゃあ淹れてくれるか?」


 またいたずらっ子のような笑みを浮かべていて、もしかして嵌められたのだろうかと頭の隅で考える。


 それを理解してもエドワード様にやらせるわけにはいかないので、諦めて腹を括る。

 

「……ほとんど淹れたことはないので、味の保証はできません」

「構わない。中身は用意してくれているから、溢さない限り大丈夫だ」


 それでも本当の紅茶は、ティーポットからカップに淹れるだけでも気をつけることが多い。


 けれど今までやったことがない上に、知識もかじった程度だ。


 絶対にエドワード様にとって、今までで1番不味いお茶を飲むことになるだろう。


 いや、もう知らない。私はエドワードに言われたから淹れるだけ。ちゃんと警告はした。


 開き直り、ティーポットをエドワード様から受け取った。

「面白かった!」「続きが読みたい!」と思ってくだされば広告下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎をポチッとお願いします!

いいね、ブクマもとても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ