あなたの記憶に幸福あれ　～とある記憶管理士の日常～

　泉ニイナは十四歳の若さで記憶管理士の資格を取得し、日常を送っていた。

　過去の事故が原因となり一部の記憶が欠落したニイナは、いつか自分の記憶と向き合う為に、様々な記憶を通して人との関係を紡いで行く。

『人は記憶無しで生きることは出来ない。けれど、時として人が生きるのに記憶は邪魔になる』

　そんな言葉が当たり前に認知された世界で、記憶管理士は記憶の抽出、管理、保管、そして時に治療行為を行う専任者として役割を担っていた。

　多くの人が自分自身の記憶を外部に保管し、日々の生活を過ごしている。そうした日常の中で、他人の記憶を垣間見し、人の想いを泉ニイナは受け止める日々が続いて行く。

「人の記憶は曖昧で、時に切なく、儚い。けれど、それ故に愛おしさを覚えるのですね……」


　記憶の欠落した少女は、人の記憶に触れる事でその人間性を取り戻して行く。

　これは感情を無くした天涯孤独の少女が人の記憶を通して幸福の在処を知る物語。

『あなたの記憶に幸福あれ』

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