第175話 女ターミネーターの専用銃は『銀玉でっぽう』
「おい!陸奥守!なんてことしてくれたんだ!」
そこに怒りに満ちたハスキーボイスが響いて全員が声がする方を振り返った。
そこには急いで歩いてくるかなめとなぜか呼んでいないのにたぶん『面白そうだから』という理由で何か鞄を抱えて付いてきているアメリアの姿があった。
その姿を見ると祥子と千代は片膝をついてかなめに向けて恭しく頭を下げてみせる。
「これは、関白殿下。ご機嫌麗しゅう存じまする」
祥子の何事も無かったかのような様子に、あらゆる被害を目撃してきた誠は絶句した。
「麗しいわけねえだろ!アタシが的にしてたぼろ車!跡形もねえじゃねえか!何をした?バレットで撃ったのか?アンチマテリアルライフルの射場は隣だ!それにオメエは砲術系の法術が使えるんだからそんなもんうちで撃つんじゃねえ!どうしてもそれが撃ちたければ裾野の東和陸軍の射爆場で飛行戦車の射撃訓練のどさくさに紛れてやれ!230㎜レールガンとの威力の違いを見せつけてやって東和陸軍にオメエを従えてるアタシの偉大さを思い知らせるのにちょうどいい!」
怒っているかと思えばすぐに収まる。カッとなるけれどもすぐに相手を許すのが誠にもかなめの長所だと思っていた。
「ハイ、承知いたしました。ですが、俺も法術特捜の事績捜査官としての忙しい身。茜から法術特捜の捜査範囲の広さ。十分知っている。その激務を縫ってあの遠い東和陸軍の射爆場のある裾野まで行くのはいかがかと……」
祥子は意地でも自分の力を祥子が言うところの自分の夫である誠に見せる気満々なのは嫌でも分かった。
「そんな12.7mmの物騒なライフルなんか使うから問題になるのよ……じゃあ、祥子ちゃん。これなんかどう?」
二人の会話の間にカバンの中を漁っていたアメリアは黒いちっちゃい物体を取り出して相変わらずかなめに頭を下げたままの証拠に手渡した。
誠はどうせアメリアが持ち出すものだからろくでもないものだと思っていたが、案の定それは駄菓子屋で売ってるような典型的な『銀玉でっぽう』だった。
「アメリアさん……ちょっとそれはやりすぎなんじゃないですか?確かに祥子さんが普通の拳銃で容疑者を撃ったら容疑者がひき肉になった上にその後ろにある建物や車が全壊するのは確定なんですけど……さすがに銀玉でっぽうは……」
誠もやりすぎだと思いながらかなめに遠慮してアメリアからまるでかなめから下賜されたもののように恭しく銀玉でっぽうを受け取る祥子を眺めていた。




