第168話 お堅い主席捜査官の気遣いで事態は悪化した
「でも、いつかえでさんとの婚約は解消するのかしら?『許婚』とあの人が主張している以上、誠さんからその提案をした場合には当然かえでさんは慰謝料を請求して来るでしょう。あの人はお金持ちの割にそう言うところは結構細かい人ですから……大丈夫です。誠さんを堕落から防ぐためなら私は弁護士としての職分としてその交渉に当たることは当然なことです……ああ、心配しないでくださいな。弁護士費用なんていただきませんわ。私はあの性犯罪者に引き込まれて落ちていく被害者である誠さんからお金を取るような悪徳弁護士ではありませんから」
いつにもなく能弁で笑顔に満ちている茜に誠は正直引いていた。
「あのー……僕はそんな決断をした覚えはないんですけど……」
そんな誠の声を聞くとそれまで静かに茶を飲んでいた祥子がゆっくりと立ち上がった。いつもの黒いケプラー製の防弾コートではなく司法局の制服に身を包んでいるために瘦身でありながらアメリア並みのグラマラスボディーがよく分かる2メートルを超える隻眼の祥子がゆっくりと誠と茜が向かい合って座る応接セットに近づいてくる様子に誠は冷や汗を流しながら黙っていた。
祥子はそのままそれが当然というように誠の隣に腰かける。誠は恐る恐る商魂顔を見つめた。
祥子はまったくの無表情で、古典ともいえる映画の未来から来た殺人ロボットの女性版のようにしか誠には見えなかった。
「ああ、茜に言われて俺もかえでのことは諦めた。アイツは海軍では俺と並ぶ切れ者と思っていたが……所詮はそこまでの器だったということだな……お前は俺を独占し、俺はお前を独占する。それが茜の歩むべき俺の生き方だという……俺もこれまでのかえでを超えるような性的に乱れた生活を行ってきたが……昨日、かえでに貴様のアレをかたどったもので胎と直腸と胃を貴様の精で満たされた時に俺は確信した。俺はお前を独占するし、お前は俺を自由に扱って良い……ならばこれから俺を弄ぶか?ちょうど先ほどお前が来ると思って直腸の方の準備ができている。いい機会だ……試してみるのも……」
誠は思った茜の説得により状況はさらに悪化した。しかも、いきなりそっちで童貞を喪失する運命を悟り誠は固まった。
「祥子さん、そう言うことは昼間から話すことでは無くてよ?でも、一日も早くお二人が結ばれてあの淫らな男女やその家来やかなめお姉さま達のいじめに近い境遇から脱出するのは決して悪いことではありません。誠さんも異論はありませんよね?当然ですわよね?祥子さんは正義感の強いまさに法術特捜の主席捜査官補佐になるために生まれたような女性なんですよ。あんな、社会不適合者たちとは違います!」
力強くそう言う茜の勢いに誠はたじたじと退きつつも、かえでの72人の妻を持つことによる誠の最期と祥子一人を妻に持つことによる自分の最期が同じ『腎虚』であるという事実を知ることになった。




