第159話 ランの言う理想の『漢の中の漢』の女ターミネーター
「クバルカ中佐……なんで黙ってみてるだけなんです?見殺しですか?かわいい部下が性犯罪者に落されようとしているんですよ?それにあの『女ターミネーター』が隣の部屋に住むようになったんですよ?この状況を中佐は黙って見逃すんですか?『漢』になるまで恋愛禁止って言ってたのは中佐じゃないですか!」
誠は相変わらず誠を無視して涼しい顔をして将棋盤と専門誌を眺めているランの机に腕を叩きつけた。
「おう、それか。あの日野の関連の話がつぶれたのはアタシとしても痛快だったな。ただ、神前よ……アタシは考えを改めたんだ」
ようやく将棋盤から顔を上げたランは良い顔をして誠を見つめた。その『萌え』を体現するような良い笑顔に誠はドキリとする。
「考えを改めたって……僕は恋愛をしてもいいってことですか?僕はまだ『漢』じゃないんでしょ?」
そう言って誠はランの脳みその代わりに筋肉が詰まっていることを証明するような一言がどのような形で表現されるのかを待つことにした。
「ああ、オメエは『漢』との恋愛以外を禁止するのに変わりはねえ。そして、オメーに『漢』になる見込みはねー。だったらオメーは『漢』と恋愛すればいーだけのことだ。これぞまさにコロンブスの卵的発想の展開だな……うん」
ランのあまりにぶっ飛んだ『コロンブスの卵』に誠は言葉を失った。ランの『コロンブスの卵』はおそらく立った段階で卵の姿をしていないような状況なことは容易に想像がついた。
「何度も言ってるじゃないですか!僕はそっちの趣味はないんです!しかも僕にそう言う感情を持っているアンはどう見ても『漢』じゃなくて『男の娘』ですよ!」
再び誠はランの座る巨大な機動部隊の隊長の机を叩いた。
「そうバンバン机を叩くんじゃねーよ。来たじゃねえか、『漢』が、オメーの部屋の隣に。伊達……アイツは性別的には女だが心は完全に『漢の中の漢』だ。オメーと伊達の結婚をアタシは許してやる!今すぐすると言え!」
ランの言い出した珍妙な発想の言葉に誠は再び言葉を失った。
確かに祥子の言動はランの理想とする『漢』そのものであることは間違いない。決断力、胆力、そしてサイボーグの身体が生み出す無限の体力。どれもランが常々誠に求めてきた『漢』の条件を満たしており、ランから見たら祥子は間違いなくランの眼鏡にかなう『漢』なのだと誠は思った。
「オメーは『漢』にはなれねえ!じゃあ、相手の女に『漢』になってもらえばいい!伊達はすでにアタシも一目置くような立派な『漢』だ。常にミニガンを持ち歩き常在戦場の心構えで生き、死地を求めて片時も自分が入る棺桶を手放さないで生きる。まさに『漢』のあるべき姿だ!命令だ!オメーは伊達と結婚しろ!仲人はアタシがしてやる!感謝しろ!」
立ち上がり誠を指さしてそう命じるランを前にして誠は再び言葉を失った。




