第155話 喧嘩中の姉妹の打順問題
「姉さんは打順のことしか頭にないんだね。野球は投げて打って成立するスポーツ。そうだと教えてくれたのは姉さんだよ。違うかな?」
挑発する口調でこれまで黙って誠の手を握って話を切り出したかえでにかなめは殺気を込めた視線を送った。
しかしかえでは怯むことなく話を続ける。
「誠君はピッチャー……千代さんの活躍の際に高等予科のエースだった祥子君はサイボーグ化のせいでリーグの規定で試合に出られない。となると、当然これまで通りうちのエースは誠君だ。誠君は打者としても優秀なのは確かだが、それ以前に投手としての能力を100%発揮できるように考える……バッテリーを組む僕ならばそう考えるね」
余裕ある笑みを浮かべるかえでの言葉にかなめは明らかに気に食わないという調子で歯を食いしばって妹を見つめていた。
「となると、四番に千代さんに座ってもらって誠君には七番に入ってもらう。そうすれば五番はどうせ僕で六番はベルガー大尉なんだろ?僕もどちらかと言えばアベレージヒッターでベルガー大尉も同じだ。そうなれば七番の誠君の打順が回った時には二塁や三塁にランナーがいる可能性が高い。得点が取れる山が四番と七番にあるチーム。僕も試合を何度か経験してもらってそんなチームを相手にリードすると気が休まることが無いからね」
誠にもその理路整然としたかえでの言葉は完全に納得できた。そしてその言葉を聞いて感情に振り回される采配で知られるかなめよりもむしろかえでがプレイングマネージャーとして監督をするべきなんじゃないかと思い始めた。
「そうだな、西園寺が気にしているのは九番のアンは打てないじゃないかということなんだろ?ただ、神前ですでに点を取ってしまえば八番の渡辺かパーラの負担は確実に軽くなる。それに、ちょうどレフトにコンバートするパーラにはじき出される打力自慢の大野を代打に出せばいいじゃないか。あの男は守備はからっきしだが長打力はある。そしてもしその後の守備があればパーラは外野のどこでも問題なくこなせるからパーラをアンが守るライトに回して大野か……ああ、西園寺の呼び出した守備が自慢の警備部の若い兵隊たちが二軍として控えているんだったな。それを使えばいい」
こちらもまたかえでの意見に賛同するようにカウラは苦虫をかみつぶした表情のかなめにそう言った。
「はいはい、皆さん頭のいい野球がお好きなようで……違うんだよ!アタシの目指している野球は!圧倒的打力で破壊!圧倒的投手力でねじ伏せる!鉄壁の守備で守り抜く!それがアタシの目指す野球だ!三番アメリア!四番神前!五番原田は譲れねえ!」
まるで子供のように頬を膨らませてかなめはそう叫んだ。




