第152話 出勤風景、怪力の家臣とそれを欲しがる関白
「それでは仕方がない……原田!」
ミニガンを置いた祥子はハンヴィーの運転席に乗り込もうとした千代を呼びつけた。千代は取る物もとりあえず主君である祥子の脇に駆け寄る。
「これを俺の車に……それとミサイルの警戒を怠るな……敵はいつどこから襲って来るか分からん。関白殿下に何かあれば俺の沽券にかかわる!それに俺を自分のものとした男をむざむざ殺されたとあっては武士たるものの恥だ!良いな!」
「殿、心得ました」
千代は祥子に静かに首を垂れると祥子が投げ捨てた重そうなラックをいとも簡単に持ち上げてハンヴィーの荷台へと運んでいった。
「あのー、祥子さん。千代さんもサイボーグなんですか?あんなに重いものを軽々と……」
例え誠に匹敵する長身とは言え生身とは思えない千代の怪力ぶりに呆れて誠はそうつぶやいた。
「いいや、原田は生身だぞ。あれぐらいのことができなければ俺の片腕は務まらん!」
そう言うと誰もがあっけにとられる中、祥子はその巨体をリムジンにねじ込んだ。
その様子を見てかなめは何かを思い出したような顔をして千代の正面に腰かける。
「僕達も行こう。祥子君と姉さんがつまらない漫才をして時間を潰してしまった。もう本当に時間がない」
そう言うとかえでは誠の手を取るがそれに対抗するようにカウラもまた反対側の右手を握る。かえではそれを一瞥するが特に気にする様子も無くリムジンに乗り込んだ。アメリアはその様子を見て相変わらず何を考えているか分から中笑顔を浮かべてそれに続く。
なかでは祥子の正面にどっかりと腰を据えたかなめが祥子の左目を見つめていた。
「おい、陸奥守……あの千代……アタシに預けてくれねえかな?」
リンが乗り込んでリムジンが駐車場を出るなりかなめは祥子にそう切り出した。
「原田を?夜伽の相手にするのか?それならいつでもいいぞ。アイツの身持ちの堅さには俺も手を焼いているんだ」
祥子は昨日全裸でかなめの股間を舐めることを命じてそれに何の文句も言わなかった千代を『身持ちが固い』と評したがその祥子の常識が誠にはどうしても受け入れられなかった。
「そんなんじゃねえんだ。アタシは女もいける口だが女は麗子の馬鹿と言うちょうどいいおもちゃがいるから足りてんの。そんなんじゃねえ、アタシにとってはもっと大事なことに使いたい……というかそんなのは『高等予科学校の四番ファースト』だった過去を持つアイツの前では何の意味もねえんだ」
かなめの言葉の意味が分からないというように祥子は当惑した表情を浮かべていた。




