第119話 待ち受けていた『ターミネーター』
「まもなく着きます……というか居ます……『暴力馬鹿』の生まればかりの雌豚が」
リンはそう言ってリムジンの速度を落とした。その真っすぐに向けられた視線にはバックミラー越しに敵意が満ち、持ち前の腹黒さが毒舌を吐かせていた。
全員は身を乗り出して前方を見つめた。
寮の前には大型の軍用車両が停められている。その屋根には何やらミサイルらしきものまで搭載されている。
そしてその前に二人の大柄な女性が立っている。どちらも誠やアメリアに匹敵するほどの長身で、特にサングラスに黒いコートに何かを抱えて背に箱のようなものを背負った女性はおそらく2メートル弱の身長だろうと推測できる。
「出やがった……ターミねーちゃん」
かなめは舌打ちしながらリンに車を停めるように合図をするとそのままためらいもなく革ジャンの下のホルスターから愛銃スプリングフィールドXDM40を抜いた。
「姉さん。そんなものは祥子君の前ではおもちゃだよ……それじゃあ降りようか」
かえではそう言うと寮から少し離れた地点で止まったリムジンのドアを開いて手を引っ張って誠を下ろした。同じく手をつないでいるカウラも意地になっても手を放すまいと一緒に降りる。
かなめは反対側のドアを開き銃を構えつつ静かに二人の黒ずくめの女に殺意のこもった視線を向けながら降り立ち、その後ろをまるで遊園地に行くような明るい笑顔を浮かべたアメリアが降りた。
誠はその長身の恐らく伊達祥子と思われる女性の手にしているものに視線を合わせた。
それは車内で見た20世紀には戦闘ヘリや軍用車両の歩兵部隊への制圧射撃に使用されたM134ミニガンがあった。そのミニガンの給弾口からは銀色の恐らく中にはベルトリンクの弾丸がつなげられており、背中に背負った大きなラックへと繋がっている。
ここは心を決める時だ。女性陣が歩みを緩める中、覚悟を決めた誠は先頭に立って歩きだした。
『アメリアさんには祥子さんは僕のものになりたくて来たと言っていたらしい。そうなれば話は通じるはず……話せばわかる……』
誠はそんなことを考えながら歩みを進めるがその祥子の持ったミニガンの銃口は誠に向けられていた。
誠もすぐに干渉空間を三重に展開できる体制を整えて歩みを進める。
気弱で知られる誠の意外な行動に思わず手を放していたかえでとカウラも驚いたようにその後に続いた。かなめは銃口を祥子に向けたままゆっくりと歩を進める。アメリ母と言えば完全にお散歩気分で上機嫌。リンは車から降りずに様子を見守っていた。
「神前……誠だな」
すぐ手の届く範囲。誠の『法術増幅システム』の助けを借りずに必殺技『光の剣』の展開できる間合いに入ったところで足を止めるのを見て祥子はそう確認するようにつぶやいた。




