第116話 昼間から動き出す斬殺魔と理解を示す女
「アンタの言うことは俺には分からないし分るつもりもないし正直どうでもいい。俺は人が斬れるからアンタに従っているだけだ。確かにそれだけ聞けば今日、アンタと話をしていた東和共和国の民間企業の雇われ役員たちがあれだけ地球人に残酷になれるかという理由だけは良く分かった。それだけわかれば俺には十分だ」
桐野はそう言うと静かにビールを口にした。
「まあねえ、この国も『民主主義』を看板に掲げちゃいるが……この国で国会議員がしている仕事は役人が決めた予算案を可決するだけだからね。新たな法律?この400年で5本くらいじゃないのかね?それも全部役人が作った法律を堂々巡りしてその時の与党の多数で可決しただけだ。条約の承認?この国がいつ他の国と条約を結んだんだい?ああ、遼州同盟に加盟する時に全会一致で承認したね。不景気になった時の補正予算?それだって役人が作った予算案を可決しただけだろ?そもそも国会の年の会期が10日ってほぼ決まっている状態が400年間続いていること自体『民主主義』なんて言えるのかい?甲武生まれのアンタ……というか甲武じゃ相撲は年1場所10日らしいじゃないのさ。『1年を10日で過ごすいい男』って言葉通りだね。まさにこの国の国会議員にも同じことが当てはまるわけだ」
皮肉を込めた調子でカラはそう言って笑いながらコーヒーを飲んだ。
「この国は自国を一切変えるつもりはない……『今困らないなら特に問題はない』それが遼州人の考え方だからな」
桐野はそう言うと一息にビールを飲むと立ち上がろうとした。
「なんだい、こっちはまだコーヒーを飲み終えちゃいないよ」
カラは不満そうにそう言って桐野を見上げた。
「アンタを見ていたらまた女が斬りたくなった……日は高いが……やりようはある」
桐野はそう言って日本刀の納められた製図用の筒を持ち上げる。
「昼間っからかい?いいさ、好きにしな、力の無い女が何人斬られて犯されようがアタシの知ったことじゃないからね。ただ、警察に捕まるのだけは止めてくれよ……というべきなんだろうがアンタの事だからその警官たちも全員斬るつもりなんだろ?そしてその中に女がいれば犯す……良いじゃないのさ。力なく生まれた遼州人、まだ力に目覚めていない遼州人は役に立たない足手まといだ。この国の1億2000万人の遼州人……多すぎるよ。桐野、多少減らしても構わないよ。特に女は子供を産むからね。減らすにはちょうどいい相手と言うところだ」
カラはそれだけ言うと会計伝票を桐野の手から奪って悠然とコーヒーを飲んだ。
「北川の口うるさいのと違ってアンタは俺を理解しているようだ。俺は良い上司を持ったようだな……茶坊主とは大違いだ」
桐野は自分に剣を教えた上官である嵯峨の事を思い出しながら足早に製図ケースを持って上品そうな喫茶店を後にした。




