第115話 腐敗を『民主主義』の必然と断じる遼州圏
「じゃあ、役人が人間なのはなぜだ?この東和みたいに地球も判子行政をしているのか?それとも地球にも甲武みたいに士族や公家が居るのか?」
ピント外れの言葉を口にする桐野を見て思わずカラは嘲笑を浮かべていた。
「まったく、アンタは女を斬って犯すしか能がないんだねえ……ああ、ビールとブレンドを」
カラはやって来たウェイターの前で桐野の悪行を隠すことも無くそう言って静かに腕を組んだ。
「理由は一緒さね。役人にも必要なのは政治家の言うことならたとえその言葉が矛盾だらけでも察して従ってくれる『忠誠心』が必要にされるからさ。そもそも地球じゃあ、民間向けの役所の窓口なんて選挙管理委員会しか無いよ。アイツ等は意地でも『民主主義』を守りたいんだからね。選挙をやるための役人……これもできるだけ金に汚い人間が最適だ。金のある人間がそいつ等に金を配って自分の当選を確実にしてくれるからね。当然、対立するこれも金持の政治家たちはこれに文句を言うがその時に金を惜しんだのが運の尽きさ。次の選挙までそいつ等は徹底的に政府から干される。最悪、一族皆殺しで保有していた会社は選挙に勝った政治家の会社に吸収される。金持ち喧嘩しないなんて言うがあんなのは嘘っぱちだね。金のある地球人ほど喧嘩が好きだ。第一、戦争なんて金が無ければできないだろ?金が無くて力の無い奴は殴り合っても腹が減るだけだよ。まあ、アンタは力があるから気に入った女を見つけては人気のない場所で斬って犯す。それも喧嘩の一つと言えなくもないが……あまり趣味の良い話じゃないね」
ウェイターは平然と犯罪行為を口にする妙齢の美女であるカラの言葉を聞こえないふりをしてビールの瓶と新しいグラス、そしてコーヒーを置いて逃げるように立ち去った。
「アンタの生まれた甲武では身分がすべてで身分が高い人間が何をしても許されてその根拠は国家に対する責任が身分によって規定されているということが理由なんだが。それに対して地球のそれはちょっと複雑でね。連中にとっては甲武の身分に当たるものは金だ。金さえあれば何をしても許される。そしてより何をしても許されるために選挙に出てその国の実権を握り、自分の思うように国を操る。連中は自国にはシビリアンコントロール……ああ、アンタには理解できないか……があるというが要するに軍人は金持ちの犬ってことさ。三権分立があるというが、裁判官も検事も全員買収済み、訴えて来る弁護のAIはすでに手を回して役人が自分の都合のいいような回答しか出てこないものに変更されてるわけだから権力者が確実に裁判に勝つ。立法も野党議員を金で寝返らせて次の選挙の前にはほぼ全国会議員が与党の会派に入ってる。何が『民主主義』だ。笑わせてくれるねえ……要するに遼州圏に対しての当てこすりなんだよ地球圏の『民主主義』は。本気で『民主主義』をしたかったら今のゲルパルトみたいにネットに強烈な憲法を根拠にした検閲をかけるかラップ共和国みたいにやたら人口が少ないからできる『直接民主主義』でもすりゃあいいのさ」
皮肉めいた笑みを浮かべてカラは静かにコーヒーを口に運ぶ。桐野はカラの言葉の半分も理解できない自分を恥じる様子もなく静かにビールをグラスに注いだ。




