第114話 戦場での『忠誠心』を持たないAIの限界
「そんな俺の捨てた国の話はどうでもいい。そのAI化の不都合な面の二つ目とやらを利かせてもらおう」
女とみればすぐに斬り殺して犯すこらえ性の無い桐野にはカラの桐野には理解できない話を聞き続けるのは限界に達していた。
「そうさねえ、なんで地球の主要国のいわゆる勤め人が役人と軍人だけになったか……そこからAIの限界という物が分かると思うんだが、所詮女を斬って犯すしか趣味が無いアンタには分からないかねえ……」
嫌味を言う世にカラはそう言って笑った。
「今の企業で使われている普通のAIは古いAIが新しいAIを作るわけだ。AIは既存のAIの弱点を学習し、それを置き換えていく。そこにもはや人の手は必要とされない……だがね、そのAIも最初にAIを作った人間がいるわけだ。その最初に作った人間の考え方をどうしても忘れることができない。だからAIの進化にはある種の特性がある。確かに他の系統のAIで別系統のAIを改良させればそれが薄まるのは確かだが……それでも『政府に忠実な僕であるAI』を作ることは難しい。AIには疑似人格は作れても人格そのものは作れないからね。だからAIには『忠誠心』が無い。使用者の考え方を学習はするがそれを尊重する精神という物はない……だから企業を所有する株主であり金なら有り余るほど持っている政治家の趣味に忠実に従う『人間』が必要なのさ」
カラはそう言って笑いながらコーヒーを飲んだ。
「確かにAI内臓のロボットには戦闘時に特定の行動パターンがあると戦闘訓練の際に言われた。ただ、それを利用し続ければAIはその弱点を突かれていることを学習するから別の攻撃方法が必要になる。だが、それもすぐに学習し……それが戦場では延々と続いた」
桐野にとってはAI搭載型の歩兵を補助するロボットと対峙した時くらいがAIと接した唯一の経験だった。
「まあ、軍のAIは軍人のシステムエンジニアが調整をくわえてるからね。民間のそれに比べるとかなり融通が利く作りになっている。でも、そのロボット兵たちはその線区の指揮官に忠誠を誓って戦ってるわけでも地球圏の勝利のために戦ってるわけでもないんだよ。あくまで、効率的に敵兵を殺傷する行動をとっているだけってわけさ。地球軍でも飛行戦車には雑巾がけしかできない労働者が使い捨ての駒として乗るわけだが……そいつ等は駒だから死んでもらっても構わないがその飛行戦車隊を指揮する正規の軍人には戦闘目的を理解し、地球圏の自分の所属する国家への絶対的忠誠心で戦い抜く覚悟を持ってもらわないと戦争を指導している政治家たちは安心できないのさ。所詮機械は機械……目的以上のことはできないのはまるで物を考えているようにしか見えないAIだって同じことだということだね」
カラはそう言うと静かに手を上げウェイターを呼んだ。




