第111話 階級闘争が資本家の完全勝利により労働者が駆逐された星地球
「地球人には金のある政治家と軍人と役人と飢えてる人間しかいないことの理由を聞きたくて俺はアンタと話をしている訳じゃない。なんでアンタは東和の企業の連中とその全員が死んだ後の地球の利権を分割する相談をこの東和の勤め人としているかの理由を聞いているんだ」
桐野は不機嫌そうにカラに向けてそう言った。
「アンタ、本当に女を斬って犯すしか能がないんだね。確かに地球人の人種はアンタの言った通りさ。地球人の勤め人は全て軍人と役人だ。でも、アンタは考えたことが無いのかい?なんで軍人と役人だけはAIとロボットに交換されなかったのかっていうことに……地球じゃあ、『AI革命』と呼ばれた時代にほぼすべての労働者と専門教育を受けた企業経営のプロ、そして医者や弁護士が失業した。そりゃあそうさ、AIとロボットはそいつ等の出来ることをより正確に休みなくしかもタダでやってくれるんだからね。会社を所有している株主はそっちの方を選ぶに決まってる」
すっかり桐野を馬鹿にするような口調になったカラは話を続けた。
「ただ、ここで困ることが二つ起きた。一つはまず、商品を誰も買ってくれなくなった。そりゃあそうさ、世の中全員失業者。出したくてもお金がない。そこでアンタの嫌いな甲武宰相西園寺義基当たりなら『国民の福祉のため』とか言って金を配りそうなもんだが……地球の労働者は失業しても今の甲武浪人たちと同じ思考の持ち主でね。それに株主だって自分の損になるようなバラマキなんて御免なんだ。だから、大学を出たおつむの良い人間に雑巾を持たせてロボットを磨かせるというお仕事を与えた。ただ、給料はとても食えないほど安い……甲武の水飲百姓だってもっともらってるっていうくらいの小銭しか会社は出さなかった。これで失業問題はなんとかなったが、市場が小さくなったのはどうしようもない。ただ会社を所有している政治家たちは『これも必要な社会変革の過程である』と有権者を煽って合理化した。そして代わりに軍事産業を製造業の中心と捉え、戦争を永遠にやめないことで経済を維持することを考え出したんだ……そしてそんな中、相対性理論が論破されて地球人は外宇宙に飛び出した。今度は宇宙開発という産業が生まれた。これも全部AIとロボットがやる。だからそれ以外の産業は地球には食品製造業だけ。あとは……そのすべての利益を吸い取って政治に足をツッコむほど頭の良くない金持ちの息子が金をどぶに捨てる為の観光業……まあ、この業界は人を雇っているから労働者が地球から絶滅したって言うのは言い過ぎかもしれないね」
カラは桐野の理解など気にする様子もなく静かにコーヒーの香りを楽しみ自分の言葉に酔っていた。




