第109話 適者生存の原則……最強の適者・遼州人
「しかし、あの勤め人に過ぎない役員連中も酷い連中だ。俺達が地球圏を支配した暁には地球人は皆殺しにすることを前提のアンタの話を平然と聞いていて、それどころか逆に今の地球人の特権階級の富がどれだけうちには言って来るかしか頭に無かった……遼州人はそんなに地球人が憎いのか?地球人を食い物にしてこの東和共和国という経済大国を作り上げて……それでも足りないとは……『足ることを知る』ことで遼州人は1億年間焼き畑農業しかせずになんの蓄えも持たずにその日暮らしで生きてきたから滅びなかった。そのことを忘れているんじゃないのかな?」
桐野の言葉にカラはまるで桐野を馬鹿にするような哄笑をする。
「なんだよ、地球人とのハーフの法術師の割に随分と遼州人の事を分かったような顔をしたことを言うじゃないのさ。そうだよ、遼州人はなんの欲も持たないことで生き延びてきたのは事実だからね。もし遼州人がこの星に来た時、地球人並みの欲の塊だったら1万年も持たずに滅んでただろうねえ……でもその欲を教えたのは他でもない地球人だ。力のない連中は欲で科学を生み出し、欲でつながって国家を生み出し、欲で地球の重力から抜け出してこの星までやって来たのさ。だったら、欲に頼らなくても力を持っている遼州人に滅ぼされる……当然の帰結じゃないのかね?アンタ……ダーウィンは知ってるかい?」
まるで小学生を見る女教師のような視線でカラは桐野を見つめた。桐野は静かに首を横に振った。
「へえ、甲武じゃダーウィンを知らなくても中等学校に進めるんだ……大した伝統国家だよ。遼帝国だって小学は別として中学に進めばどんなできの悪い生徒もその名くらいは聞いたことがあるもんだよ。あの甲武が『百姓帝国』と馬鹿にしている遼帝国がだよ?まあ、いいさ」
完全に桐野と彼が背負う元地球人の伝統を誇りとする甲武国を馬鹿に仕切った調子で遼帝国生まれのカラはコーヒーを一口口に含んだ。
「生物は環境により適応した者だけが生き残る。それ以外は滅びる。その為に進化し続ける……ただし、環境に適応すればそれ以上の進化は起きない……ガラパゴス諸島で奴が見たのはそんな光景だった。地球人は確かに地球の環境に適応するために欲を身につけ、科学や進歩の精神を磨き、そして戦争を限りなく好み、その所属する組織のために死ぬことが最大の美徳であると考える思考を獲得して地球の覇者となった……ただ、それは地球から出る前のお話だ。この宇宙にはより地球の環境に適応する存在が居た……それが遼州人だったというだけの話さ。だから生存競争で地球人は敗者となり、遼州人だけが生き残る……地球の連中も納得して絶滅してくれると思うがね」
カラはそう言うと満足そうにコーヒーに添えられていたケーキに手を伸ばした。




