第102話 ちっちゃな副隊長にとっての『対岸の火事』
ほとんど拉致同然に誠とカウラ、そしてアメリアまでもがかなめによって機動部隊の詰め所に連れ帰られた。
そこにはいつも通り一人で将棋盤を前にうなっているどうみても8歳幼女の機動部隊長クバルカ・ラン中佐と漢字が読めないので事務仕事がまるでできないため今夢中の18禁着せ替え系イケメンナンパゲームに夢中な『男の娘』、アン・ナン・パク軍曹の姿だけがあった。
「工事、始まったな……あの珍妙な金が減るのはいーこった。アタシも司法局の本局であの金のことで色々上から言われるのに飽きてきたんだ」
ランはお気に入りの銀をどう打つかを考えながら将棋盤に目をやっていた。
「おい、姐御!姐御はあの『独眼竜ターミねーちゃん』が法術特捜に入ることを知ってたろ?知ってたんだな?」
早速ランにかみついたのはかなめだった。つかつかとランの座る巨大な機動部隊の隊長の机に腕をつくと将棋盤から目を逸らそうとしない小さなランの頭を上から見つめた。
「知ってた。良ーじゃねーか。うちにはすでにオメーという爆弾娘がいる。今更爆弾の一つや二つ増えたところで何が変わるというわけもねー」
全くかなめの言うことに関心がないというようにランは銀を何度も盤上のどこに指すかを試すようなしぐさを続けている。
「おう、言うじゃねえか。言っとくがな。アタシはあんな野蛮な武家とは無縁のたおやかなる公家の姫君なんだ。多少銃を無駄に撃つことはあるが味方ごとミサイルでぶっ飛ばす……というか間抜けにその巻き添えに自分がなるようなあぶねえ女じゃねえ!」
祥子と同列に扱われたことに腹を立てたかなめはそう言ってもう一度机を大きくたたいた。
その音に合わせるかのようにかえでとリンが部屋に入ってきてにらみ合うかなめとリンの様子を腕組みをして眺めている。
「アタシから言わせるとどっちも似たようなもん。まさに五十歩百歩だ……それにだ……」
そう言うとランは顔を上げたそこには満面の笑みが浮かんでいた。
「あの伊達……確かにその問題児ぶりたるや、西園寺と日野を合体させて強化光線を浴びせて巨大化させたくらいの威力だ。正直、うちで第三小隊を設立します、予算は十倍用意しますと言われてもアタシは即答で『嫌だ』と答えるレベルだ。そいつが優等生の部下のラーナしか管理した経験のねー茜の部下になる……こりゃあ楽しみだ」
完全に他人事。同じ同盟司法局の敷地の同じ建物にあるものの司法局実働部隊と法術特捜は別組織である。司法局実働部隊の副隊長ではあるが法術特捜とはただの捜査協力者供給元に過ぎないランにとってはまさに祥子の配属は『対岸の火事』であることがその様子を恐怖にかられた表情で眺める誠からもその笑顔から見て取れた。




