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番外編・魔王の生贄はニンゲンの冒険者と友人になりたい5


 宰相の了承は取り付けた。最後、ベルン様に話を通さなければ。おりしも、ちょうどティータイム、ベルン様がリラックスされているところを見計らって、お願いをするのよ。……ああ、これでは傾国の生贄になってしまう。

 いやいや、大丈夫。魔国のイメージアップにつながると、宰相も判断したのだから。私の一番の目的が期間限定の友人がほしい、だとしても、浄化のスキルアップをしたいのも間違いないのだから。


 ベルン様の私室にたどり着く。侍女たちが一歩下がりすっと一礼する。

 入室すれば花びらがはらはらと降ってきた、もちろんそれはベルン様の魔力が見せる錯覚だけど。それから、春風のような魔力にふんわりと包まれた。ベルン様がわざわざ立ち上がり、こちらまで来て私に手を差し出す。その手を取って、共にいつものソファーまで歩いて座れば、ますます花びらがはらはらと落ちてきた。


「この部屋でメリッサが来てくれるのを待つというのも、良いものだな。」

 ベルン様の嬉しそうな雰囲気に、私も同じように嬉しくなってしまって。思わず、私の魔力をベルン様の腕にきゅっとからませれば。その魔力を優しく捕まらえれて、捕まえられて、じたばたしても離してはもらえなくて。さらにはベルン様の手が、私の手をやんわり捕まえてしまった。

 何だか恥ずかしくなって、私はふいと視線をそらして……。いやいや、こうしてる場合じゃないわ、話さないと。


「ティータイムのくつろぎ時間に申し訳ないのですが。お願いがあるのです。」

 ベルン様がゆったりとうなずいた。

「メリッサの願いなら、何でも叶えよう。」

 ……それは、オカシイからね?何でも叶えるなんてしては、ダメだからね?

 でも、今日のこの願いは何としても叶えてほしいのだけれど。


「冒険者リアを三か月、私の浄化の講師にしていただきたいのです。」

 ベルン様がゆったりとうなずいた。

「もちろん、叶えよう。」

 ベルン様がこう言ってくださることは、想定済み。でも、話はこれからが本番なのよ。

「報告が上がっているかと思いますが、リアとその伴侶はトラブルに巻き込まれております。

 その状態では、リアに安心して教えてもらうことができません。ですから。

 その間の王城の滞在と、またトラブルへ介入して解決するお許しを頂きたいのです。」

 ベルン様がゆったりとうなずき、こう言った。

「メリッサ、願うものはすべて教えてくれまいか。」


 私は立ち上がり、深く膝を折る。

「できましたら、リアとその伴侶に、魔国の保護も与えてはいただけませんでしょうか。」

「もちろん、叶えよう。」

 ベルン様はゆったりとそう答えると立ち上がり、私の手を取って座るよううながした。

 そして私の肩を抱き寄せ、ゆっくり髪をなでつつ、私たち二人をしっかりと魔力で取り巻いてしまった。


「姫の願いなら、俺は叶えたいのだ。だが、姫は何が気になるのか?」

「今回のことは浄化の件があっても、私の我儘ですから。」

 神妙に答えれば、返ってきたのは笑い声だった。

「姫の我儘くらい、小さな願いくらい、俺には叶えられるぞ?

 無論、星や月を取ってきてほしいというのは、俺でも無理だが。」

 その答えに、今度は私が笑ってしまった。

「姫、できぬことはできぬが、それ以外は叶えたいのだ。ほかにはないか?」

 

 すぐさま思い浮かんだことがあった。ほかにも叶えると言われて、すぐこれを持ち出すのはどうかと思うけれど。

「リアの滞在中は、午前は私の指導に当たってもらいたいと考えています。

 午前のティータイムの代わりに、ベルン様とは朝か夕方の散歩を共にしたいのですが。」

「もちろん、叶えよう。」

「浄化の実践のため、瘴気の発生場所に行くこともあるでしょう。」

「もちろん、俺も共に行こう。」

 ……いいのかしら。でも、宰相が言っていたわね、イメージアップよ。

「ありがとうございます。その場合、翌日はリアに休みを取ってもらい、ベルン様とお茶の時間を長めに取れたらと、思っています。」

「もちろん、叶えよう。」

「あの、本当によろしいのですか?」

 私はとうとう、そう聞いてしまった。


 ベルン様の魔力がきゅっと私をからめとる。さらにはその腕がぎゅっと私を引き寄せた。

「俺は悔いているのだ。

 メリッサに早く魔国に、俺に慣れてほしかった。ニンゲンをそばに置くと、それが叶わぬかと思った。

 だが同族と話したくなることもあるだろう。姫はニンゲンなのだから。

 俺の配慮が足らなかった。」


 私は幸せな気分で、ベルン様の肩に頭を寄せて答える。

「気にかけてくださって、ありがとうございます。

 でも、私はそれで良かったのだと思います。

 ですから今、ニンゲンの令嬢と友人のようなおしゃべりがしたくなって、ベルン様がそれを叶えてくださることが、私はとても嬉しいのです。」

「そうか。」

 ベルン様が私の髪をなでる、繰り返し。そして私はどきどきしながら、これを口に出す。

「実は、もう一つお願いがあるのですが。」




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