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番外編・魔王の生贄はニンゲンの冒険者と友人になりたい4


 次に宰相を呼び出す。忙しい宰相を私の件で時間を取らせるのは申し訳ないけれど、魔国のイメージアップにつながるということで、我儘を言わせてもらうわ。

「ありがとう。すぐ来てくださって。

 あのニンゲンの冒険者を、私のサポートとして手配してくれたのも、宰相ですわよね。本当に助かりましたわ。

 そこで宰相に相談があるのです。あの冒険者を私の浄化の講師として、しばらく魔国に滞在してもらえないかと考えておりますの。私が実践で浄化を使えるようになれば、魔国のさらなるイメージアップにつながるかと。

 宰相の意見を伺いたいわ。」

「問題ございません。

 生贄様の浄化のお力は、確かにイメージアップにつながります。魔国の生贄様が浄化される、それだけでも効果がありますが。

 生贄様が浄化される際には、陛下が必ず同行されるでしょう。魔国の王がニンゲンの生贄様を大切にしている、これを他種族に見せることこそがイメージアップなのでございます。」

 なるほど、そこまでは考えが及ばなかったわ。


「では、私の浄化の力をそれに使う方針ということで、良いかしら?」

「陛下は反対されるでしょうが、生贄様がお望みになられましたら、叶えられますでしょう。」

 私は傾国の生贄になる気はないのだけど。今回は望ませてもらうわ。魔国のイメージアップそして、期間限定の友人をゲットするために!

「では、冒険者リアには講師として滞在してもらうとして。私は本当に初心者ですから、一か月程度では無理だと思いますの。せめて二、三か月は欲しいですわ。

 それでも、短期で私だけが学ぶには限界があります。ですから、私の浄化をサポートする魔族の養成もお願いできたらと考えております。サポートができる魔族がいれば、陛下も安心されるはずですわ。」

「かしこまりました。では、そのように手配させていただきます。」


 あっさりと、宰相はうなずいてしまった。ええ、本当にいいの?それに、

「待ってくださる?あの二人の事情、どうも訳ありそうでしたわ。宰相は何か知っているのではなくて?」

「もちろん、あまりに怪しい素性の者を生贄様に近づけるわけにはまいりませんので、ざっくりとですが確認しております。

 まず、四大公爵のうち青公爵の令嬢を、エルフから請われて、結界専門の魔法使いとして派遣しておりまして。ちょうど帰国しておりました令嬢がたまたまリアという冒険者を見かけ、彼女ならなら信頼できると、聖属性持ちを探しておりましたこちらに知らせてきたのでございます。

 ちなみに令嬢は、エルフの国に来るまでリアは、レジェかダシル王国で聖女をやっていたのではないかと話しておりました。」

「なるほど。だから、あれほどまで浄化に熟達しているのね。」

「さようでございましょう。」


 けれど、どこかの王国の貴族令嬢で、聖女もしていたリアが、国を出て冒険者を夫にしているということは。令嬢で聖女なリアと冒険者が、どこかで知り合って、互いに恋をして、ついには二人で国を出る決意もして、リアは冒険者として生きていく覚悟も決めて。というストーリーが思い浮かぶのよね。

 ああ、いったいどこで、どんなふうに知り合ったのかしら。貴族令嬢と冒険者が知り合う機会なんてそうないもの。令嬢として誘拐されかけたリアをたまたま助けたとか?それとも聖女として狙われたリアをたまたま救ったとか?どちらもいいわ、こんな身分差のある恋って、とってもドラマティックなのだもの。

 ……侍女たちが貸してくれた山ほどの恋愛小説のおかげで、私の頭のなかはとても花畑だわ。

 でも、できれば、二人のなれそめを聞いてみたいけれど。リアは婚約中や結婚後のことは話してくれるけれど、それまでのことは、ご容赦くださいと言って話そうとはしないから。


「生贄様がお望みでしたら、素性を詳しくお調べしますが?」

 宰相がそう言う。でも、

「いいえ、リアが話さないのだから、わたくしはそれで良いわ。

 エルフの国で魔族が信頼するほどの冒険者であった。私にはそれで十分でしょう?

 それより青公爵の令嬢は、リアの訳ありな様子についても知っているのかしら?」


 宰相がうなずく。

「リアというよりはその伴侶が、トラブルに巻き込まれているようだと話しておりました。ですが、二人とも冒険者ギルドの規約違反をするようなことはしないと、何か事情があるのだろうと断言しまして。」

「ということはエルフの国で、リアもその伴侶もかなりの信頼を得ていたのね。」

「その辺りは魔族の情報網で確認済みです。エルフの国の冒険者ギルドでの評判も良く。特にリアという冒険者は専属の魔法使いにもなっていたようで、かなりの成果を挙げています。その伴侶の冒険者も同様に。」


 私は首をかしげる。

「そんな二人が、いえリアの夫が巻き込まれたトラブルというのは、具体的にどんなものなの?」

「少々厄介なものでございます。

 探索依頼された魔導具等の強奪そして逃走したということになっており、依頼主より追手がかけられている状態です。加えて依頼主がグロンダン王国、さらには邪教集団ともつながりがあったことから、より面倒なことになっております。

 実際には、あの冒険者は依頼物の強奪などしていないようですが。」

「まあ、ではどうしてそんなことになったのかしら?」

「濡れ衣とか、嵌めらたとか、そんなところでしょう。

 あの冒険者も手を打っており、調べさせた者がなるほどと唸っておりましたが。ただ、あれでは解決までに一年以上かかるでしょうな。」

 あら、まあ、まるで冒険譚のようだわ。それに、

「もうそんなに調べがついているの?」

「生贄様に不審な者を近づけるわけには参りませんので。陛下からお叱りを受けてしまいます。」


 ここまで聞いて私は今一度考える。そして、決めた。

「それほどまでのやっかいな事情があったとしても、リアは得難い人材だと、わたくしは思いますの。優秀な浄化の講師として、ぜひ魔国に滞在していただきたいのですわ。」

 何より友人として。私の一方的な友人認定ではあるけれど、期間限定で良いからそれを叶えたい。


「だから宰相、ニンゲン間のトラブルと言うなら、ニンゲンでは魔国の王城に侵入できないでしょう。リアとその夫が王城に滞在すれば、かなり安全なのではなくて?」

 宰相が当然といったふうにうなずいた。

「ニンゲンにはまず、無理でしょう。侵入できてもすぐ気づかれます。

 生贄様がこちらに来られてから、ますます城は防犯が強固になりましたからな。」

「……もしかして陛下の指示なの?」

「もちろんでございます。」

 ……ちょっと、頬が熱くなってしまった。


 いやいやそれよりも、王城の滞在でひとまずの身の安全は確保しても、これだけでは足りない。

「けれど、リアが安全でなければ、加えてリアの伴侶も安全でなければ、リアに安心して教えてもらうことができないわ。だから。」

 私は、私の持つ権力を使う覚悟を決めてこれを問う。ほぼ命令になることを承知の上で。

「リアの夫のトラブルに、魔国が介入することはできて?」

「陛下の生贄様のためならば。」

 宰相が即答した。権力ってコワイ……。でも、今回はどうしても使うわ。

「陛下はそれを許してくださるかしら?」

「生贄様がお願いされましたら、まず間違いなく。」

 ……やっぱり、権力ってコワイ。でも今回は使うわよ。


「介入が可能なら、どのくらいで解決するものかしら?」

「一か月もあれば、何らかの進展が見込めるでしょう。

 こちらの対外婚活支援課の精鋭を向かわせます。あれらは、どんなトラブルも対応いたしますので。あとは冒険者をしている魔族に通達を出し報酬付きの協力要請を。」

 ……こちらはこちらで、別の冒険譚のようだわ。用件が片付いたら話を聞いてみたいくらい。


 そして最後に、私はもう一つ付け加えた。疑問形でも命令になることを承知の上で。

「それならば、リアの身の安全を考えて、やはり滞在は三か月くらい必要ですわね?」




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