おまけの小話・生贄はやっぱり異文化交流中です
そんな数日後。天井から花びらもはらはらと降っている長閑なティータイム。もちろん花びらはベルン様の魔力が見せる錯覚だけど。
今日は私から、ベルン様に触れてみたいと思っている。たとえば、角とか。
角のない私にはよくわからないことなので、慎重を期してベルン様に許可を取れば、
「もちろんだ。」
とにっこり笑顔。では、と手を伸ばしておそるおそる触れてみる。つやつやなのね、すべすべなのね、と撫でてみる。
嫌ではなかったかと角の持ち主をを見れば、ベルン様がゆったりと微笑んだ。
そして。
降っていた花びらのシャワーが土砂降りになった。
……錯覚に溺れそうだわ。
慌てて手を離せば、残念そうにベルン様の魔力が床をのたうった。
「私がいろんな意味でドキドキしますので、少しずつ触るのに慣れさせてもらっても良いでしょうか。」
残念そうにしながらもベルン様はこう言ってくれた。
「姫がそうしたいならば。少しずつ慣れてくれるか?」
「はい。
ところで、何か私に聞きたいことがおありとか?」
話題を変えれば、ベルン様がいつものように微笑んだ。
「冒険譚や恋愛小説が流行し始めてからは、魔国での作家の育成、出版社の助成などをおこなってきた。
だが、まだ半分以上、帝国をはじめ、レジェ国やパストゥール王国そのほかのニンゲンの国から小説を輸入している状態だ。」
私はうなずく。最近では、帝国では読みようもなかった魔族が主人公の冒険譚を楽しませてもらっているけれど。確かに侍女たちが紹介してくれた恋愛小説は、ニンゲンが主人公のものばかりだった。私に合わせてくれたのかもしれないけれど。
ベルン様が私のカップにミルクを入れ、そして紅茶を注ぐ。
「そんなわけで、メリッサに参考として聞いておきたい。
今、帝国の小説、特に恋愛小説に出てくる言葉で、物議をかもしているものがあるのだ。」
私は内心首をかしげつつ、紅茶のカップを手に取った。
ただの恋愛小説に、そんな問題のある言葉なんてあったかしらね?
私は内心首をかしげつつ、紅茶のカップを口に運ぶ。
ベルン様が穏やかに微笑む。
「姫は、ヤンデレと言う言葉をご存知かな?」
むせた……。




