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生贄は有名になります


 姫といえど帝国では底辺だった私が、一躍時の人になってしまった。

 おかしい。あり得ない。何で。間違ってる。そうでしょ!? 

 今まで底辺だった私がいきなりこんなことになるなんて、むしろコワイ。

 夫人や令嬢からお茶会のお誘いの手紙も、束になって届くようになってしまった。コワイ……。


 ひとまず女官長に相談する、というか半分泣きついた。

「まず、生贄様は陛下との結婚式がすんでおりません。その後の披露目もまだでございます。ゆえに陛下は、生贄様を城からは出したくないとお考えでしょう。」

「では、この手紙はお断りの返事をすれば良いのかしら?」

「それもよろしいですが、王城の庭園にお招きするという方法もございます。」

「生贄専用の庭に?」

「とんでもございません。あれは陛下と生贄様だけの庭。お茶会用の部屋か、城の庭園のどこかを会場にされるので十分でございます。」


 なるほど。でも、気が重いわ。底辺だった私をお茶会に誘う誰かなどいなかった。圧倒的に経験値が足りない。

 しかも招く順番とかややこしそう。一つ間違えば、どこかでバトルが起こるかもしれないし。ここも女官長に頼むしかないわ。

「誰をどんな順番で招いたら良いか、私には分からないわ。教えてもらえるかしら?」

「もちろんでございます。」

 女官長が請け負ってくれたので、これは一安心。私は、夫人や令嬢向けのアフタヌーンティーメニューを考えることにしよう。

 

 まず女官長がリストアップしてくれたのが、公爵夫人四人に公爵令嬢二人。次のお茶会では侯爵夫人八人、さらに次で侯爵令嬢十人。少ない人数から慣れていきましょうとのことだった。妥当なのはわかるわ。でも私、大丈夫かしら。とりあえずコワイ。


 アフタヌーンティーのメニューは、一口サイズのサンドイッチを五種類。フルーツサラダにミニトマトのコンポート。スコーンにはクロテッド―クリームにジャムを三種類。ストロベリー、ブルーベリーとプラム。焼き菓子いろいろ、ケーキを五種類に、帝国風トライフルも加えて。私のアイデアもそろそろ限界。

 女性向けに選ぶ楽しさと、甘いものを多く。これで何とかなってくれると良いのだけど。

 

 そして当日、魔国では帝国風のドレスが流行っているらしく、皆ぴっちり腰を締め付けるドレスだった。私はといえば、侍女たちの力作に仕上がっている。久々の正式なドレスで少々窮屈だけど。

「帝国では、紅茶をストレートでも楽しみますが、ミルクをいれても楽しんでいますの。よろしかったらお試しください。ミルクをお試しの場合は、侍女に声をおかけになってくださいね。専用の茶葉でいれたものをご用意しますので。」

「まあ、ミルクを入れた紅茶も美味しいです。わたくし、ストレートよりこちらが好みですわ。」

「生贄様、わたくし最近紅茶が興味深くて、薔薇の香りの紅茶を取り寄せてみましたの。」

「それは素晴らしいです。レジェやパストゥールでは、さまざまな香りをつけた紅茶があるそうですから。」

「お聞きしたいことがありますの。雑誌に載っておりました生贄様のドレス、あれも帝国のドレスなのですか?」

「ええ、室内用ですが、来客とのティ―タイムにも着用できるドレスです。締め付けが少なく、くつろいで過ごせますので、そんな主旨のティータイムには特におすすめですわ。」

「まあ、秘密のお茶会にはぴったりではなくて?

 わたくしもお聞きしてよろしいかしら。生贄様は工芸茶と呼ばれるお茶を、どこでお知りになられたましたの?」

 

 こんな感じで、お茶会はなごやかにすすんだ。良かった。本当に良かった……!

 特にバトルも起こらなかったし。でも、さすがに淑女までバトルはしないかもしれないわね。

 ただし、生贄様は素晴らしいです、さすが生贄様、などと言われるのには困った。というより。

 受け入れれてくれるのは有難いけれど、むしろコワイ。だって底辺な私がそこまで賞賛されるなんてあり得ない。そこは何とか頑張って姫らしく笑顔を張り付けていたけれど、……コワイ。


 そんな夫人と令嬢たちのお茶会を何度か繰り返しているうちに、少しは慣れたかと思った頃、女官長が教えてくれた。

「生贄様は魔国にお茶文化を広めた第一人者と評されております。」

 いったい誰がどこで、そんなことを言ったのよ!?しかも私は、たいしたことはしてないし。

 コワすぎるでしょ!!



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