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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第九章 ランクA国家バドール

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第九十五話 マテウスの提案

「で、お前らはそれでもアーカーシャに入りたいのか?」

マテウスが言った。

まるで値踏みするような視線。


──これは、俺たちの覚悟を確かめている。

〝ぶっ飛んでいる〟かどうかを。


俺は、少し息を吸ってから言った。

「査定官デュランをぶっ飛ばして、仲間を取り返したいんです」


俺の言葉に、マテウスは煙草を吸うのを止めた。

「デュランをぶっ飛ばす?」

言葉を繰り返すと、煙を吐きながら笑い始めた。

「ある意味アーカーシャをぶっ壊すよりぶっ飛んでるな。

デュランと言えば式術を無効化できる黒の式者。各国の査定を担う──いわば帝国の中枢だぞ」


「はい。そのデュランに、仲間をさらわれました。なので、ぶっ飛ばして取り返します」


「策はあるのか?」


「現状、ありません。正面突破です」


「もはや無謀の極みだな。だが面白い」

マテウスは再び煙草を吸った。


「協力してくれますか」

俺は、マテウスの目を見ながら言った。


「できる範囲でならな。俺ができるのは、チップの場所の特定くらいだ。

どうやって入るかまでは手伝えない」


「それで大丈夫です。──エイナ」

俺はエイナを見た。


「なんだ?お前のチップを探すんじゃないのか」

マテウスは不思議そうな顔をする。


「いえ──俺たちはチップなんて入っていません。

ユグラシアの人間じゃないので」


俺の言葉に、マテウスは目を丸くした。





「……本当のようだな。電波が一切感じられない。これなら、検知されずに入れるんじゃないのか?検問を突破できればだが」


マテウスは、お手製の機械を俺にかざしてから言った。

他のメンバー、キセキ、メイ、ラウルも同様の反応だった。

最後にエイナにかざした時。


機械が反応して、音を出した。

マテウスが、コンピュータの画面を見る。


「エイナ=ウィザロッド。十八歳。女性。

職業は不定。緑の十八将。よって、主国アーカーシャ以外はフリーパス。

身体情報は──まあいいとして、

お前、出入国履歴が五十三回もあるぞ。どれだけ国を行き来しているんだ」


「国土開発の仕事で、大陸中を飛び回っていましたから。身体情報まで出るんですね。チップの情報から」

エイナは少し不快そうな顔をした。


「チップの情報を解析すれば、生まれてからこれまでの記録はほとんど出せるぞ。今のは検問用の照会情報だけだ」


「……それ以上はやめてください。で、私のチップはどこにあるんですか」


エイナが言うと、マテウスは頭を押さえた。


「厄介な場所なんですか?」

俺が聞くと、マテウスは頷いた。


「ここだ。──頭の中だ」


──選択肢にはなかったものの、タガロの作戦が使えないことが確定した。


「なんでそんな場所に入ってるんですか」

エイナは不服そうな顔をした。

「指とかなら最悪覚悟してたのに、首は切れません」


覚悟してたのかよ。

──改めて、タガロの判断を思うと恐ろしさを感じる。


「チップを入れているのは、出生監理局の仕事だからな。場所の理由は知らん。だが──チップを切り離すのは無理だな」

マテウスが呟いた。

「というか、十八将なら、六帝や六賢を目指せばいいんじゃないか?」


「そんな簡単になれるものではないでしょう。私と言うより──彼らには時間がないんです。アイネさん──仲間を助けないと」


「じゃあ別にお前が行く必要ないじゃないか」


「──彼らの仲間なら、私にとってもアイネさんは仲間です。一緒に行かない理由がありません」

エイナが強く言った。


少し、場が静まる。


「──お前、やっと義理人情を分かってきたじゃねえか」

なぜか、アバロンが腕を組みながら泣いている。

「それだ。それこそが仲間ってやつだ」


──暑苦しい。だけど、エイナがそう思ってくれたことは、嬉しかった。

会ったこともないアイネを救うことを、優先してくれている。


最初は、単純にアーカーシャに行き、知らないことを確かめると言う知的探求心だけだったはずだ。


そのエイナが。


俺たちを仲間だと言ってくれた。


エイナは少し顔を赤くしている。


「とにかく!私は彼らと行かなきゃいけないんです。何か策はないですか」


マテウスは、少し考えた後、コンピュータを触り始めた。

画面に、色々な情報が出てくる。

「今の六帝は──おっ、青帝が変わったんだな。

しかし、空席はないな。

六賢のほうは、と。……あれ、科学の賢者が空位になってるぞ。ギランはどうしたんだ」


不意に知っている名前が出てきて驚く。

ギラン。


ウィザルを襲った、レイサスの同僚。

ウィザルで捕縛されたはずだが──六賢をクビになったのか?


「帝国人事情報によると、〝職務遂行力の欠如〟ってなってるな。なにやらかしたんだ」

マテウスが呟く。


俺たちは知っている。

おそらく、ウィザルの制圧に失敗したことが要因だろう。

しかし、それでクビになるなんて。

助け出したりはしないのだろうか。

アーカーシャの真意が、いまだに掴めない。


「お前、科学の六賢になればいいんじゃないか?」

マテウスが不意に言った。


エイナがきょとん、とした顔をする。

「……私は十八師でもなんでもないですよ。それに、科学は専門外です」


マテウスは笑った。

「知らなかったか?六帝は十八将から自動的に選ばれるけどな、六賢は推薦で選ばれるんだ」


「……そういえば、レイサス叔父様がそんなようなことを言っていた気がします。あまり六賢を想定していなかったので、うろ覚えですが」


「推薦者は三名必要だ。現在の六帝、六賢のうち一人ずつからの推薦。

加えて──過去の同職者からの推薦。二人はこの場にいる」

マテウスはアバロンを見た。


情報管理の六賢、茶の六帝。


「でも、ギランからの推薦は無理だと思いますよ」

俺が言った。

ウィザルまで戻っている時間もないし、

そもそも──推薦するわけがない。


「過去の同職者なら、他にもいるぜ」

マテウスが言った。


「ギランの師匠であり、前任者。この国の科学を創った爺さん。

──コウだ」


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