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ユグラシア冒険記 —幼なじみに連れられて、未知の大陸を冒険することになった件—  作者: ヨダカカツキ
第九章 ランクA国家バドール

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第九十一話 エイナの元上司、茶帝アバロン

遠くに見えるのは──まさに摩天楼だった。

アルカディアの建物が、かすむほどの高層。

雲を突き抜けている。

一体どうやって作っているんだろう。


それがひしめき合っている。

空に飛んでいるのは、鳥ではない。

車だ。


俺たちが乗ってきたエアカーが、建物の周りを自由自在に飛び回っている。

科学の最先端。バドール国首都、ダビデ。


俺たちが車を降りたのは──そこから遠く離れた砂漠地帯だった。


「なんであっち行かないんだよ」

俺はエイナに言った。


「言ったでしょう。まずアバロン長官に会います」


「この国の実質トップなら、ああいうところにいるんじゃないのか?」


「普通はそうでしょうね。ただ、長官は普通ではないので」

そう言いながら、エイナは砂漠地帯にあるプレハブに向かって進んでいった。


ちょうど、そこから人が出てくる。

あご髭をたくわえた──中年。

平たくいえば、おっさん。


明らかに肉体労働者のそのおっさんは、エイナを見るなりものすごい形相になった。


そして──おっさんの前の地面が盛り上がった。

地面が爆ぜる。


巨大な土塊が砲弾のように飛んできた。



思わず俺が前に出ると、ガーディアンが発動する。

土の塊は、俺の前の透明な壁で崩れた。


「長官。いきなりご挨拶ですね」

エイナが近寄りながら言った。


「何しにきやがった!責任感のかけらもないじゃじゃ馬が!」

おっさんは、がなり立てる。


「何のことです?電話でお伝えしましたし、業務の引継ぎも完了。書類手続きも済ませてますよ」


「そういう問題じゃあ……ねえんだよ!」

おっさんは再び土の塊をぶつけてくる。

再び、ガーディアンが発動する。


「何がご不満なんですか」

エイナは不思議そうに言った。


「普通、仕事辞めるっていうならよ!直接挨拶に来るのが筋ってもんだろうがい!」

おっさん──アバロン長官は、まだ怒っているようだ。


「それは、規定集にありましたか?」

エイナは端末を調べながら言った。


「……ねえよ!そういうんじゃねえ!義理人情の話だろうが!」


エイナは端末をポケットにしまった。

「やはり、規約にありませんね。その上で、今長官は式術を使って元部下の私に攻撃を仕掛けました」


「……っ!ただの脅しだろうが。本気じゃねえよ」


「だとしても、これは立派な規約違反ですね。帝国に通報すれば、下手したら職を失いますね」


「お、おい!何言ってんだよ!やめろよ!この仕事をやり遂げないと俺は死ねねえんだ」

アバロンは急にうろたえはじめる。


──完全に、エイナのペースだな。


「分かりました。では、交渉しましょう。アバロン長官は、私たちに力を貸す代わりに私はこのことを不問とする。いかがでしょう」


アバロンは、深いため息をついた。

「……エイナ、お前何も変わってねえな」


その言葉に、エイナは微笑みを返す。

「ええ。長官が一番怖いものは、今の仕事ができなくなることですからね」


アバロンは、諦めたように俺たちをプレハブに案内した。




「しかしよう、いきなり辞めるやつがあるか。こう見えて、俺はお前に期待していたんだぜ」

アバロンはソファーに座りながら言った。


「それは感じてましたよ。ひしひしと。私も国土開発の仕事は好きでした」


「エイナが設計図を書いて、デンガランが造る。完璧なコンビだと思ってたんだけどなあ。何でまた急に辞めたんだ」

アバロンが言うと、エイナは俺たちを見回した。


「この人たちと旅する方が楽しそうだったからです」


エイナの回答に、アバロンは頬杖をついた。

「あのなあ……。国土開発庁だって、誰でも入れるもんじゃねえんだぞ。

厳しい試験と面接をクリアして、やっと入庁。実務に携われるのはひと握り。

お前だって、覚えてるだろう」


「はい。でも、彼らと一緒に動けるのは、今しかありませんから」

エイナの回答には、迷いがない。


「……まあいいや。旅とやらが終わったら、戻ってこい。仕事は山積みだ」


「それはまた、その時に考えます。長官はまだ現場開発をやり続けるんですか?」


「当たり前だろ。机に座ってたって、街や国はできねえ。式力を、手足を全力で動かして、俺は未来を創ってんだよ」


「……長官も相変わらずです。で、本題ですが」

エイナは話を戻した。

「長官に力を貸してほしいことがあります」


「交換条件ってやつか。なんだ」

アバロンは、煙草に火をつけた。

煙が部屋の中に充満する。


俺は少し咳き込んだ。


「はい。私たちをアーカーシャに入れて下さい」


「……は?」


アバロンは煙草の煙と一緒に、間の抜けた声を出した。



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